厚生労働省 石川労働局

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パートタイム労働法 Q&A
 
問1 社内には「パート」と呼ばれている、正社員と同じ時間働いている有期契約の労働者がいます。このような労働者もパートタイム労働法の対象ですか。
 
問2 日中は短時間労働者が従事している業務と同一の業務を深夜に通常の労働者が行う場合は、職務内容の同一性の判断はどのようになりますか。
 
問3 施行日以前に雇い入れた短時間労働者に対する文書の交付等はどのように考えればよいでしょう。
 
問4 雇入通知書の様式で労働基準法第15条に基づく明示と、パートタイム労働法第6条第1項に基づく明示を同時に行う場合は、電子メール・ファクシミリによることとしてもよいでしょうか。
 
問5 有期契約労働者であって、契約更新時に賃金の上昇の可能性がある場合には、「昇給あり」と明示することとなりますか。
 
問6 正社員が月給制で、パートは時給制であることは法第8条で禁止される差別的取扱いにあたりますか。
 
問7 差別的取扱い禁止規定の適用がある場合、家族手当や住宅手当等、「職務に密接に関連する」とはいえない賃金の支給額を、時間比例分少なくすることはできるでしょうか。
 
問8 法第8条の要件を満たす短時間労働者がいる事業所において、整理解雇を行う場合、留意することは何でしょう。
 
問9 法第9条第1項に関しては、基本給、賞与、役付手当等といった職務関連賃金それぞれすべてについて措置を講じなければなりませんか。
 
問10 パート労働者の職種ごとに賃金を定めていれば、法第9条第1項に定める「職務の内容」を勘案して賃金を決定したものなりますか。
 
問11 新卒採用しか行わないこととしている事業所において、短時間労働者の中に新卒者がほとんどいないことが明らかな場合は、法第12条第1項の措置として何を講じればいいでしょう。
 
問12 自社のHPに正社員の求人情報を掲載していれば、法第12条第1項第1号に定める募集情報の周知を履行したこととなりますか。
 
問13 短時間労働者が待遇について説明を求めることができるのは、自分自身の場合に限られますか。
 
問14 パートタイム労働者を雇い入れる際に事業主が説明した事項に関してパートタイム労働者は後に再度説明を求めることができますか。
 
 


問1 社内には「パート」と呼ばれている、正社員と同じ時間働いている有期契約の労働者がいます。このような労働者もパートタイム労働法の対象ですか。
 
この法律の適用対象となるパートタイム労働者の定義は「パート」「アルバイト」「嘱託」「臨時社員」等の社内での名称を問わず、その事業所において「一週間の所定労働時間が通常の労働者より短い者」となっています。したがって、問いのような労働者は「パート」と呼ばれていても法の対象とはなりません。
しかし、フルタイムで働く「パート」などの名称で呼ばれている労働者についても、雇用管理にあたってこの法律の趣旨が考慮されるべきことに留意してください(パートタイム労働指針)。



問2 日中はパートタイム労働者が従事している業務と同一の業務を深夜に通常の労働者が行う場合は、職務内容の同一性の判断はどのようになりますか。
 
同一の業務を日中に行う場合と深夜に行う場合とを比較して、
例えば
(1) 深夜については日中と比較して肉体的な負荷が大きい、困難度が高い等の違いがある。
(2) 深夜については、日中と比較して、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度につき違いがある。
と言った場合には、業務の内容や当該業務に伴い責任の程度が異なっており、職務内容が同一でないこととなります。
しかしながら、行う時間帯が異なることだけで当然に業務の内容が異なることとなるものではない点に留意が必要です。



問3 改正法の施行日(平成20年4月1日)以前に雇い入れたパートタイム労働者に対する労働条件の文書交付等はどのように考えればよいでしょう。
 
当該パートタイム労働者が期間の定めのない労働契約である場合は、施行の前に雇い入れているものですから、文書交付等の義務が新たに発生するということはありません。
また、当該パートタイム労働者が期間の定めのある労働契約である場合には、法施行後、毎回の契約更新時が「雇い入れたとき」に当たるため、その時点で文書交付等の義務が生じます。



問4 雇入通知書の様式で労働基準法第15条に基づく明示と、パートタイム労働法第6条第1項に基づく明示を同時に行う場合は、電子メール・ファクシミリによることとしてもよいでしょうか。
 
労働基準法第15条に基づく明示に関しては、文書の交付以外の方法が認められていないことから、パートタイム労働法第6条第1項に基づく明示と同時に行う場合でも電子メール・ファクシミリによることはできず、書面等で行うことになります。



問5 有期契約労働者であって、契約更新時に賃金の増額の可能性がある場合には「昇給あり」と明示することとなりますか。
 
「昇給」とは、一つの契約期間の中での賃金の増額を指し、有期労働契約の契約更新時の賃金改定という形で実質上は昇給のように見える場合は「昇給」に当たらないものです。ですから、契約更新時の賃金改定を除くと昇給が予定されていないような場合は、パートタイム労働法第6条の義務の履行に当たっては「昇給なし」と明示することとなります。
しかし、この第6条第1項の趣旨は、パートタイム労働者にとって重要な待遇であり相談事例も多くなっている昇給、賞与及び退職金の有無についての取扱いを明らかにすることによって、パートタイム労働者の納得性を向上させようというものですから、問のような場合が同法第6条の解釈上「昇給」に当たらないとしても、義務の履行とは別に「契約更新時に賃金改定あり」といった内容を明示することは望ましい取扱いです



問6 正社員が月給制で、パートは時給制であることはパートタイム労働法第8条で禁止される差別的取扱いにあたりますか。
 
賃金の支払い形態が異なっても、時間当たりの基本給及び諸手当の算定方法が正社員と同じであれば不利益が発生していないといえるため、差別的取扱いとはなりません。しかし、月給制と時給制との間で、欠勤日の取扱いが異なる等、結果的に時間当たりの賃金に差額が出るような取扱いとなっている場合には、パートタイム労働法第8条で禁止される差別的取扱いに当たります。



問7 差別的取扱い禁止規定の適用がある場合、家族手当や住宅手当等、「職務に密接に関連する」とはいえない賃金の支給額を、時間比例分少なくすることはできるでしょうか。
 
差別的取扱い禁止規定の対象となるパートタイム労働者について、その基本給を通常の労働者と比べた所定労働時間の違いに比例したものとすることは可能ですが、これは、短時間労働者の所定労働時間が短いことに基づく合理的な取扱いの差異として認められるものです。
他方、賃金の性質として所定労働時間の長さに応じて支給されているものではなく、所定労働時間が短い分を比例的に減額することについて合理性が認められない場合は、差別的取扱い禁止規定違反になります。この典型的な事例として、扶養家族の数に比例して支給していると考えられる家族手当、賃貸住宅への入居者等に対して支給していると考えられる住宅手当が挙げられます。



問8 パートタイム労働法第8条の要件を満たすパートタイム労働者がいる事業所において、整理解雇を行う場合、留意することは何でしょう。
 
パートタイム労働法第8条の要件を満たすパートタイム労働者に対しては、すべての待遇について通常の労働者との間での差別的取扱いが禁止されることとなりますが、これには、パートタイム労働者であることを解雇対象の選定理由とすることも含まれます。
すなわち、問いの事業所において整理解雇を行おうとするとき、一定の基準に沿って解雇対象者を選定し、結果的に選定された者がパートタイム労働者のみとなっているということはその選定が公平に行われている限り許容されますが、そのような考え方によらず、パートタイム労働者のみを一律解雇する場合は、第8条違反となります



問9 パートタイム労働者の賃金については、基本給、賞与、役付手当等といった職務関連賃金それぞれすべてについて「職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等」を勘案して決定しなければなりませんか。
 
パートタイム労働法第9条第1項に規定する「職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案する」努力義務に関しては、パートタイム労働者の賃金制度がこのような要素が勘案されないものになりがちであることを踏まえて、例えば、責任の程度の違いを勘案して基本給に差を設ける、職務の成果の違いを賞与の算定に当たって勘案する、意欲を勘案して精勤手当を支給することとする、といった具体的な措置を講ずることが必要です。これらいずれかの措置が取られ、何らかの形で「職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等」が全体として職務関連賃金に反映されていれば措置を講じているといえます。すなわち、必ずしも職務関連賃金のすべてについて措置を講じなければならないものではありません。
ただし、すべての短時間労働者に対して支給される職務関連賃金として一般的なものは基本給であることを考えれば、まずはこれについて何らかの要素を考慮するよう努めることが望ましいものです。



問10 パートタイム労働者の職種ごとに賃金を定めていれば、パートタイム労働法第9条第1項に定める「職務の内容」を勘案して賃金を決定したものとなりますか。
 
例えば、3つの職種でパートタイム労働者を雇用している事業所で、職種ごとに賃金を定めているというだけでは、同法第9条第1項に定める「職務の内容」を勘案して賃金を決定したこととはなりません。この「職務の内容を勘案する」とは、「業務の内容及び責任の程度」を具体的に勘案していることを意味するので、業務の内容や責任の程度の違いに踏み込まず単に職種ごとの賃金設定をしているだけでは足りないこととなります
問のような場合は、それぞれの職種ごとに、課される責任の程度や労働者の能力、経験の変化がないか、成果や意欲を反映させられないか、といった点を検討し、勘案する要素の程度等の違いに応じて賃金の決定を行うよう努めてください。



問11 新卒採用しか行わないこととしている事業所において、パートタイム労働者の中に新卒者がほとんどいないことが明らかな場合は、通常の労働者への転換の措置として何を講じればいいでしょう。
 
雇用対策法(昭和41年法律第132号)第10条において、募集・採用における年齢にかかわりない均等な機会が定められているが、同法施行規則(昭和41年労働省令第23号)第1条の3において、長期間の継続勤務による職務に必要な能力の開発及び向上を図ることを目的とする場合には、青少年その他特定の年齢を下回ることを要件として募集・採用を行うことは可能とされています。
当該事業所における募集・採用のすべてが新規採用又は一定年齢以下の若年者等のみを対象としている場合、雇用するパートタイム労働者で当該要件に該当しない者に対しては、例えば、通常の労働者として必要な能力を取得するための教育訓練を実施する、又は当該教育訓練を受ける機会を確保するために必要な援助を行う等により、正社員への転換推進措置を講ずることが必要です。
この場合、併せて、将来、新規学卒者や若年者以外の中途採用を行う際には、当該情報を周知する予定である旨も短時間労働者に周知することが望ましいものです。
なお、このような教育訓練の措置を取ることは、当該事業所の募集・採用方針からみて正社員転換の可能性は当面ないとしても、事業活動を継続する中にあっては、いずれかの段階で若干なりとも中途採用をすることが考えられることから、そうした機会に正社員転換を行えるよう支援をする趣旨です。



問12 自社のHPに正社員の求人情報を掲載していれば、通常の労働者への転換措置として、募集情報の周知を履行したこととなりますか。
 
パートタイム労働法第12条第1項の措置として募集情報の周知の方法を取る場合には、事業所内のパートタイム労働者が通常目にすることができる場所に設置されている掲示板に掲示するなど、募集期間終了までに希望者が見ることのできる状態にあることが必要です。問の場合はそのような状態になっていないと考えられるため、一般には、履行したこととなりません。



問13 パートタイム労働者が説明を求めることができるのは、自分自身の待遇に関することに限られますか(他のパートタイム労働者の待遇の決定理由についても、説明を求めることができますか)。
 
パートタイム労働者が自らの待遇についての納得性を高めるためには、他のパートタイム労働者の待遇と自身の待遇の違いについて知ろうとして他のパートタイム労働者の待遇の決定理由の説明を希望する場合も考えられます。
しかしパートタイム労働者間の待遇の問題については、それぞれに通常の労働者との間で均衡を考慮するための措置が講じられる結果としてパートタイム労働者間の均衡が確保されることとなり、直接的には法の射程外になります。
したがって、パートタイム労働法第13条によりパートタイム労働者が説明を求めることができるのは、通常の労働者との比較における自分自身の待遇に関することに限られます。



問14 パートタイム労働者を雇い入れる際に事業主が説明した事項に関して、パートタイム労働者は後に再度説明を求めることができますか。
 
パートタイム労働法第13条の事業主の説明義務は、同法第6条に規定する労働条件に関する文書の交付等の義務とあいまって、パートタイム労働者の納得性の向上を図るものです。具体的には、まず雇い入れ時において労働条件に関する文書の交付等により労働条件の明確化を図り、それ以降雇用されている間に生ずる待遇に関する疑問等については、その都度、事業主に対して説明を求めることができることとなっています。
ですから、同条に定める説明の対象事項であるものについて、再度の説明を求めることができます。





 
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