『石綿関連疾患の分類』
(1) 石綿肺
石綿肺は、病理学的にはび慢性間質性肺腺維症であり、他の疾患との鑑別が困難
な場合がある。通常石綿ばく露から10年以上後に胸部X線で下肺野に不整形陰影
を呈する初期病変が現れる。
(2) 肺がん
石綿ばく露量が多くなるほど肺がんのリスクは高くなる。
喫煙と石綿の両者のばく露を受けると、肺がんのリスクは相乗的に高くなることが知
られている。
(3) 中皮種
中皮種は、胸膜、腹膜、心膜、精巣鞘膜より発生する悪性腫瘍であり、石綿ばく露か
ら概ね30~50年後に発症する。頻度は胸膜原発が最も多く、次いで、腹膜であり、
心膜や精巣鞘膜の中皮種は非常に稀である。石綿ばく露歴があり、原因不明の胸水
や、頑固な胸痛、健診時の異常陰影をみた場合には胸膜中皮種も考慮に入れる必
要がある。
(4) 良性石綿胸水
石綿のばく露によって生じる非悪性の胸水を良性石綿胸水という。石綿ばく露から
10年以内に発症することもあるが、多くは、20~40年後に発症する。
(5) び慢性胸膜肥厚
石綿によるび慢性胸膜肥厚は、良性石綿胸水の後遺症として生じることが多いが、
稀に、明らかな胸水貯留を認めず、徐々にび慢性の胸膜肥厚が進展する場合もあ
る。いずれも病理学的には臓側胸膜の慢性繊維性胸膜炎であるが、壁側胸膜にも
病変が及ぶ。
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