家内労働のチェックポイント

●委託者の皆さんにチェックしていただく事項

「家内労働手帳」を家内労働者に交付し、委託のつど記入しましょう。
 口約束などにより、委託条件があいまいなまま仕事を委託すると、後で無用のトラブルを招くことがあります。工賃・支払期日などの委託条件は、あらかじめ家内労働手帳で明確に定めておきましょう。
 厚生労働省では、家内労働手帳のモデル様式を作成し、これを各労働局及び労働基準監督署に配布しています。家内労働手帳は、相手方の承諾を得て、コンピュータ等を利用して作成した電磁的記録(メール、フロッピーティスク等)によって交付することもできます。
伝票式家内労働手帳モデル様式
 
工賃は〔現金〕で、〔全額を1か月以内〕に支払いましょう。
 家内労働法では、委託者の工賃支払いに関する義務として、次のことを定めています。
(1)  工賃は、原則として、現金で、その全額を支払わなければなりません。ただし、家内労働者の同意があれば、郵便為替・口座振込み等の方法で支払うことも可能です。
(2)  工賃は、家内労働者から製品を受け取ってから(毎月一定期日を工賃締切日として定めている場合はその締切日から)1か月以内に支払わねばなりません。
(3)
 都道府県ごとに、特定の業種・品目・作業について、最低工賃が定められています。該当する作業を委託する場合には,この基準を下回らないよう注意して下さい。
 
東京都内では、
1 電気機械器具製造業
2 婦人既製洋服製造業
3 革靴製造業
の3業種について最低工賃が定められています。
最低工賃一覧表
 
委託者には、届の提出、及び帳簿の備付けの義務があります。
(1)
 委託状況届の提出
 委託者は、委託する内容や家内労働者数などについて、委託者の営業所を管轄する労働基準監督署に届を提出するよう義務付けられています。
 提出時期は
 
新たに委託を開始した場合…… 遅滞なく
継続して委託している場合…… 毎年4月1日現在の状況を4月30日までに
となっています。
委託状況届
(2)
 家内労働死傷病届の提出
 委託者は、家内労働者が、委託した業務に関し、負傷し又は疾病にかかり、死亡又は4日以上休業した場合には、速やかに委託者の営業所を管轄する労働基準監督署に届を提出してください。
家内労働死傷病届
(3)
 帳簿の備付け
 委託者は、家内労働者の氏名や工賃支払額などを記載した帳簿を備え付け、3年間保存しなければなりません。なお、帳簿は電子データによるものでも差し支えありません。
帳 簿

 

 

災害防止措置を講じましょう。
 委託者は、家内労働者に機械器具や原材料を譲渡したり提供したりする場合には、次のような措置を講じて下さい
(1)  プレス機械等については安全装置を取り付けて下さい。
(2)  モーター、バフ盤等については、覆いを取り付けて下さい。
(3)

 危害防止のための「作業心得」などの書面を交付して下さい。

  (厚生労働省作成の「作業心得」のモデルがあります。)
(4)  有機溶剤を含む接着剤などの有害物を扱う作業については、漏れたり発散したりするおそれのない容器を使用し、容器の見やすい箇所に有害物の名称や取り扱い上の注意事項を表示して下さい。
 
就業時間について配慮しましょう。
 委託者には、家内労働者の就業時間を管理する義務はありませんが、長時間の就業を強いることのないよう業務量・納期について配慮しましょう。
 
委託を打切る場合は事前に予告をしましょう。
 家内労働者は、工賃で生計をたてたり、工賃を生計の補助としたりしていますので、突然その仕事を打ち切られると大きな影響を受けることになります。6か月以上継続して委託している家内労働者への委託を打ち切ろうとする場合には、ただちにその旨予告をするようにしましょう。
 

●家内労働者の皆さんにチェックしていただく事項

 
安全・衛生に充分な配慮を。
 
 
 家内労働者は労働者と事業主の両方の側面を持っています。
 一般の労働者と大きく違うところは、就業について、すべて家内労働者自身で管理をするということです。当然、自らのそして補助者の健康管理については、自らが責任を持たねばなりません。
 安全と健康を確保するため、次のことを守りましょう。
(1)  接着剤には、身体に害を及ぼす有機溶剤を含むものがあります。このような危険有害な原材料等を使用する場合には、換気をよくし、中毒にかからないようにしましょう。
 また、有機溶剤は発火しやすいので、ストーブなどの火気にも気をつけましょう。
(2)  プレス機械、織機などけがをするおそれのある機械を使用する場合には、安全装置を取り付けるなど安全な方法で作業しましょう。
(3)  危険有害な仕事に従事する場合は、必要な保護具を使用して下さい。
    (例;強烈な騒音を発生する仕事では耳栓を使用する)
(4)  委託者から危険防止のための「作業心得」などの書面を受け取ったら、見やすい場所に貼り、その注意事項は必ず守るようにしましょう。
(5)  家内労働者は誰からも就業時間を管理されませんが、長時間就業を続けると、健康を害したり、相互間の過当競争による弊害を招くおそれがあります。
長時間にわたる労働就業はなるべく避け、やむを得ずする場合は、適度な休憩時間をとるようにしましょう。また、そのような長時間労働就業をしなければならないような無理な仕事の受注は避けましょう。
 なお、有機溶剤やプレス機械を使用される方は、団体・組合を通じて、労災保険に任意で加入できる制度がありますので、当局又は最寄りの労働基準監督署へお尋ね下さい。
労災保険特別加入制度
 
「インチキ内職」にご用心。
 あらたに内職をはじめようとする方は、いわゆる「インチキ内職」に注意しましょう。
 「インチキ内職」の形態には以下のような例がみられます。
(1)  内職講習会と称して多額の受講料などを取り、委託した仕事については種々の条件をつけて買いたたいたり、仕上がり具合を問題にして買上げを拒否したりする。
(2)  相当の工賃収入が得られると宣伝し、高額の機械を市価の倍額近くで売りつけ、工賃の取り決めはあいまいである。
(3)  あて名書きの仕事としながら、報酬は通信販売用のダイレクトメールに対する商品の申し込み数に応じた歩合制となっていたり、返還するとしていた保証金を業務をやめても返還しなかったりする。
(4)  「自宅で簡単にできる内職」という広告で、パソコンや教材を高額で売りつけたり、講習を受けさせ高額の講習料を取ったりする。
 これらの「インチキ内職」は、家内労働法で規制できないものが多く、一般の民事的・刑事的なトラブルとして処理されるものがほとんどです。また、家内労働法は主に製造業を対象とした法律で、(3)のようなあて名書きや委託販売といった仕事は、内職であっても家内労働法にいう「家内労働」に該当しないために、家内労働法の適用がありません。
 これらの「インチキ内職」の被害を防ぐには、内職希望者自身の注意が大切です。誰にでもできる簡単な仕事で高収入が得られるというような「うまい話」は普通あり得ません。
 また、家内労働を始めるときは、あらかじめ工賃などの委託条件をきちんと確認しておけば、「インチキ内職」に限らず、後々無用なトラブルを招かずに済むでしょう。
 なお、東京都では、この「インチキ内職」などのトラブルの相談窓口として、東京都消費生活総合センター(飯田橋)(新宿区神楽河岸1-1セントラルプラザ16階)を設けています。
 
 
このページのトップに戻る

東京労働局標章 〒102-8305 東京都千代田区九段南1-2-1                            

Copyright(c)2000-2017 Tokyo Labor Bureau.All rights reserved.