<なかなか減らない所定外労働> |
我が国の勤労者が1年間に働いた時間(総実労働時間)は近年着実に減ってきています。ところが、残業や休日出勤で働いた時間(所定外労働時間)はあまり減少がみられず、いまだに高い水準にあります。
本来、所定外労働というものは、正規の勤務時間ではどうしても仕事が済ませられない臨時・緊急の場合、のみ行うものです。ところが実際には、常日頃から所定外労働をしているという傾向が見られます。このうち休日労働は、平均的にはそれほど多く行われているものではありませんが、一部では相当頻繁に行われています。
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<なぜ所定外労働を減らさなくてはならないのか> |
そうは言っても、勤労者本人が納得して所定外労働をしているのであれば問題はないのではないか?と疑問を持たれるかもしれません。勤労者の生活時間は、労働時間だけではなく、個人の自由時間、家族と触れ合う時間、社会とかかわる時間から成り立っています。残業や休日出勤が多ければ多いほど、このような時間が犠牲になることになり、能率が下がり使用者にとってもよいことではありません。
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1 個人の自由時間 |
豊かな社会では、自由時間を人それぞれが有意義に過ごし、それらを通じて自己の実現を図っていこうとする傾向がでてきます。これを進めるためには所定外労働を減らし、日々の自由時間を十分に確保し、それが自由に使えるようにすることが不可欠です。
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2 家族のふれあい |
勤労者は家族の一員です。残業や休日出勤が多ければ、それだけ家族がともに過ごす時間が少なくなります。一緒に食事をとることもできず、ほとんど言葉を交わしあうこともないといったことでは、充実した家庭生活を送ることも難しくなります。
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3 地域社会とのかかわり |
勤労者は地域社会の一員です。ところが所定外労働が多ければ、時間的な制約から地域社会のいろいろな活動に参加していくことは困難になります。今後、老後生活が長期化していく中で、地域社会の様々な人と交流し、社会にとけ込んでいくことはますます重要になるでしょう。
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4 健康と創造性 |
長時間、そして深夜に及ぶ労働、あるいは休日をとらずに働くことは、疲労やストレスの大きな原因です。また、ゆとりのない状態では創造的な仕事は満足にはできません。残業を減らして、心とからだのゆとりを取り戻し、健康で創造的な生活を送るようにすることが大事です。
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5 働きやすい職場環境 |
体力的に個人差のある高齢者や、育児や介護など家庭的責任を負う勤労者にとって残業が毎日長時間行われたり休日労働が行われたりするような状態で働くのは難しいものです。特に家庭的責任を有する労働者についてはその責任を果たすための活動や調整に困難を伴いがちです。働く意欲のあるすべての勤労者が十分能力をいかして働けるようにするには、所定外労働を減らし、働きやすい職場環境づくりをしていくことが必要です。
<所定外労働削減の目標>
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(1)所定外労働は削減する。
各企業においては、自企業の所定外労働の現状や部門、職場による違いを踏まえ、重点削減対象を設定するなど一層の所定外労働の削減を図る。
(2)サービス残業はなくす。
適正な労働時間管理を実施し、サービス残業を生むような土壌をなくしていく。
(3)休日労働は極力行わない。
休日労働をさせた場合でも1週間に1日は休めるようにするとともに、休日労働の現状を踏まえ、労使双方が十分に話合い、回数制限などの取組みを行う。
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<所定外労働を減らすためには何をするべきか> |
◎ 企業の労使が取り組むべきこと |
1 労働時間に対する意識を改善しよう |
あなたの職場では、つきあいで残っているという「つきあい残業」はありませんか?残業や休日出勤を当然視するような雰囲気があっては、所定外労働の削減は望めません。「職場に長時間いることが善である」という風潮を改め、「所定外労働は、臨時・緊急のときにのみ行うもの」という原則を認識することが大切です。
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2 業務体制を改善しよう |
あなたの職場では、業務体制が所定外労働を前提にしたものになっていませんか?仕事にムダやムラが生じるような業務体制は思い切って見直していくことが求められます。本当に必要な業務だけをやるようにし、特定の人に集中している仕事をできるだけほかの人に分担させるようにすることが大切です。業務ごとに必要な人員をきちんと確保し、残業や休日出勤をしなくても業務が処理できるような体制をとっていくことが求められます。
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3 所定外労働削減のための労使委員会を設置しよう |
所定外労働の削減は、労使のいずれか一方だけが取り組んでもなかなか進むものではありません。所定外労働を減らすためには何をすべきか労使でよく話し合うことが必要です。
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4 「ノー残業デー」「ノー残業ウィーク」をつくろう |
残業を効果的に減らす方策の一つとして、一定の曜日や週を「ノー残業デー」又は「ノー残業ウィーク」として、その曜日・週には残業を行わないというルールをつくることが考えられます。「ノー残業デー」「ノー残業ウィーク」を定めたら、ポスターの掲示、機関紙誌でのPR等により、社内に十分広報し、実効あるものとなるよう徹底していく必要があります。
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5 フレックスタイム制や変形労働時間制を活用しよう |
所定外労働を減らすことができない理由としては、「業務の繁閑の差が激しい」「取引先の業務時間や顧客の便宜を考えなければならない」、「取引先の発注に時間的余裕がない」、「特定の従業員しかできない業務がある」が多く挙げられています。
特にホワイトカラーの場合は仕事が定型的でなく、時間が不規則になりがちなので、フレックスタイム制を採用し、時間を効率的に配分して全体の労働時間を減らしていくことが有効です。
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6 ホワイトカラー等の残業を削減しよう |
近年、定型的でない仕事が増加する中で、特にホワイトカラーにおいて労働時間の管理が困難となり、残業がなかなか減らないという状況がみられます。研究開発職など時間管理になじまない職種については、裁量労働制を導入し、勤労者の自主的な活動を尊重することが望まれます。
一方、労働時間管理の可能な職種については、残業や休日労働を行わせる場合の手続きを厳正にし、使用者が、始業・終業時刻を確認し記録することや、タイムカード・ICカード等の客観的な記録を基礎として始業・終業時刻を確認し記録するなど、労働時間の適正な把握を心がけましょう。
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7 時間外労働協定の延長時間を短縮しよう |
時間外労働協定の延長時間は適切に設定されていますか?
時間外労働を行う場合には労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることが必要です。時間外労働協定を締結する労使は、一定期間について厚生労働大臣が定める時間外労働の延長時間の限度を超えないように延長時間を設定し、業務の改善を進めながら徐々にその時間を短縮していくことが求められます。
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8 「原則限度時間」を設定しよう |
時間外労働協定の延長時間は、文字どおり所定外労働が可能な最大限度の時間数であり、通常からその時間数を目途として業務を行っていたのでは、なかなか所定外労働を減らすことはできません。そこで、その時間外労働協定の延長時間とは別にそれを下回るように「原則限度時間」を設定し、原則として、これを超える所定外労働は行わないようにすることが効果的です。また、原則としてある時刻以降は残業を行わないという「原則限度時刻」を定めることも考えられます。
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9 所定外労働を行う理由を限定しよう |
「ノー残業デー」や「原則限度時間」を定めても、単に仕事があるというような理由で残業をしていたのでは、実効はあがりません。
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10 休日を確保しよう |
家庭生活への影響や健康の維持、回復を図る観点から、休日をきちんと確保していくことが大切です。そこで残業や休日労働を行った場合は、それに応じた代休を与えるといった代休制度を導入することが望まれます。休日労働は行わないというのが原則ですが、労使双方が十分話し合い回数制限などの取組を行いつつ、やむを得ない場合はあらかじめ休日の振替を行うようにしましょう。
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<社会全体として取り組むべきこと> |
1 企業系列・業界団体の一体となった取組みを推進しよう
所定外労働がなかなか減らない理由の一つに、取引先からの発注や顧客へのサービスといった問題があります。取引先からの無理な発注が恒常化している状態では、所定外労働を計画的に減らしていくことはできません。そこで、まず、親企業や取引先が下請中小企業に十分配慮した発注を行うよう努めるとともに、企業系列や業界団体が一体となって労働時間短縮のための基本方針や計画を定めて推進していくことが求められます。
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2 過剰サービスを見直そう
翌日配送の宅急便や、24時間営業の店舗などのサービスの高度化は、消費者の利便の点では好ましいことですが、中には過剰サービスを提供しようとしてサービスを提供する側の所定外労働時間が長くなるという例もみられます。そこで、営業時間と労働時間を区別し、営業時間の延長が労働時間を長くすることがないようにするとともに、消費者側も、過剰サービスはサービスを提供する側の長時間労働を引きおこすということを十分認識し、サービスのあり方について考え直していく必要があります。 |