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厚 生 労 働 省
東 京 労 働 局 発 表
平成22年8月26日





東京労働局労働基準部監督課
 監 督 課 長    松田 明
 監 察 監 督 官  本間 裕之

過労死・過労自殺など過重労働による健康障害を発生させた事業場に対する監督指導結果について

東京労働局(局長 東 明洋)は、管下18の労働基準監督署(支署)が平成21年度に実施した、過労死・過労自殺など過重労働による健康障害を発生させた事業場に対する監督指導結果の概要を以下のとおり取りまとめました。

この監督指導においては、臨検した労働基準監督官が、確認された法令違反について是正勧告を行い、早期の改善を指導しましたが、東京労働局では、これらの事業場の多くに基本的な労働時間管理、健康管理の不備等が認められたことを重くみて、長時間労働の抑制及び過重労働による健康障害防止に向け、今後一層積極的に監督指導を実施することとしています。

また、東京労働局においては、毎年9月を「過重労働による健康障害防止推進月間」と定め集中的な啓発活動を実施していますが、本年度は、来る9月3日に「産業保健フォーラムIN TOKYO 2010」(九段会館)を開催し、関係労使にとどまらず広く国民一般に対し労働者の健康の確保について意識啓発を行うこととしています。

【監督指導結果の概要】

1 監督指導時における違反状況

監督指導を実施した72事業場(うち過労死19事業場、過労自殺7事業場)のうち、67事業場(93%)に何らかの法令違反が認められ是正勧告を行った。

違反率が高かった事項は、

(1) 労働基準法では、労働時間(同法第32条)に関する違反が最も高く50事業場(違反率69%)であった。

(2) 労働安全衛生法では、衛生管理者又は衛生推進者の選任(同法第12条・第12条の2)に関する違反が最も高く20事業場(違反率33%)であった。

2 被災労働者に係る健康管理状況

監督指導を実施した72事業場のうち、

(1) 19事業場(26%)では、過重労働による健康被害を受けた労働者(以下「被災労働者」という。)に対し、発症前の1年間に健康診断を受診させていなかった。

(2) 22事業場(31%)では、発症前に受診した健康診断で何らかの所見が認められた被災労働者に対し、健康診断の事後措置を講じていなかった。

(3) 44事業場(61%)では、被災者が発症した時期に、医師による面接指導等の制度を導入していなかった。

3 以上のとおり、過重労働による健康障害を発生させた事業場については、法令違反の比率が高く(一般の監督指導における違反率約69%)、かつ、被災労働者に係る健康管理体制の不備が少なからず認められた。

1 監督指導の概要

(1) 実施時期

平成21年4月1日~平成22年3月31日

(2) 目的

過労死・過労自殺など過重労働による健康障害を発生させた事業場に対し、問題点を明らかにし、再発防止対策を徹底させること。

(3) 対象事業場

不適切な労働時間管理・健康管理を原因として、過労死や過労自殺など過重労働による健康障害を発生させ、労働基準監督署長が労災認定を行った72事業場。(うち過労死19事業場、過労自殺7事業場)

2 対象事業場の概要

(1) 業種別内訳(表1)

「本社事務所等」が最も多く21事業場、次いで「建設業」の11事業場、「卸・小売業」「接客娯楽業」の10事業場の順となっている。

(表1) 業種別内訳

業 種 事業場数 比率(%) 業 種 事業場数 比率(%)
製造業 3 4.2 教育・研究業 5 6.9
建設業 11 15.3 保健衛生業 2 2.8
運輸交通業 3 4.2 接客娯楽業 10 13.9
卸・小売業 10 13.9 清掃業 2 2.8
金融・広告業 3 4.2 本社事務所等 21 29.2
映画・演劇業 2 2.8 合 計 72 100.0

業種別内訳

(2) 規模別内訳(表2)

規模別では、「10~49人」が最も多く31事業場、次いで「10人未満」の12事業場、以下、「300~999人」、「100~299人」の順となっている。

(表2)規模別内訳

規 模 事業場数 比率(%) 規 模 事業場数 比率(%)
10人未満 12 16.7 100~299人 8 11.1
10~49人 31 43.1 300~999人 9 12.5
50~99人 6 8.3 1000人以上 6 8.3

合 計 72 100.0

規模別内訳

(3) 被災労働者の従事業務別内訳(表3)

管理的な立場にある者(労働基準法第41条の管理・監督者に該当しない管理職を含む。)は19人で、これらの役職にない一般労働者は53人であった。

一般労働者の業務内訳は、営業・販売に従事する者が8人と最も多く、次いで技術職7人、施工監理6人、設計・デザイン6人、調理師5人、システムエンジニア5人の順となっている。

(表3)業務別内訳

従事業務等
管理的な立場にあった者 19
一般労働者

営業・販売職 8 設計・デザイン 6 自動車運転者 4
技術職 7 調理師 5 店舗管理 3
施工監理 6 システムエンジニア 5 その他*1 9

*1  その他の9人は、事務職、警備員、看護師等の労働者である。

3 監督指導結果(表4の1、2)

監督指導を実施した72事業場のうち、67事業場(違反率93.1%)において労働基準法、労働安全衛生法等の法違反が認められ、法違反が認められなかった5事業場の全てに対しても、労働時間の適正管理、過重労働による健康障害防止等について、文書による改善指導を実施した。

(1) 指摘した違反項目を違反率でみると、労働基準法では、時間外・休日労働の届出なく又は協定の範囲を超えて時間外労働をさせていたもの(同法第32条違反)が50事業場(同69.4%)と最も高く、次いで時間外手当等の未払(同法第37条)が36事業場(同50.0%)で、不適切な労働時間管理が多く認められた(表4の1)。

(2) 労働安全衛生法では、衛生推進者の未選任が15事業場(同48.4%)と最も多く、次いで衛生委員会を設置していなかったものが6事業場(同20.7%)、衛生管理者未選任(同法第12条)、健康診断結果報告未提出(安全衛生規則第52条)が5事業場(同17.2%)あり、衛生管理体制の不備が少なからず認められた(表4の2)。

(表4の1)法違反の状況(労働基準法関係)

労働基準法違反 違反事業場数 違反率
労働時間(法32条1項2項) 50 69.4%
割増賃金(法37条) 36 50.0%
労働条件明示(法15条1項) 17 23.6%
就業規則(法89条1項) 13 18.1%
休日(法35条1項) 11 15.3%
賃金台帳(法108条) 5 6.9%
法令等の周知(法106条1項) 4 5.6%

(表4の2) 法違反の状況 (労働安全衛生法関係)

労働安全衛生法違反 違反事業場数 違反率
衛生推進者の選任(※法12条の2) 15 48.4%
衛生委員会の設置(*法18条1項) 6 20.7%
衛生管理者の選任(*法12条1項) 5 17.2%
健康診断の結果報告(*安衛則52条) 5 17.2%
健診結果に係る意見聴取(法66条の4) 11 15.3%
深夜業務従事者の健診(安衛則45条) 9 12.5%
定期健康診断(安衛則44 条1項) 8 11.1%

※印は事業場規模10~49人に適用。

*印は事業場規模50人以上に適用。

4 対象事業場における管理状況

(1)被災労働者に対する健康診断の実施及び事後措置の状況(表5)

被災労働者に対して発症前の1年間に健康診断(採用後1年未満の者は雇入時の健康診断を含む。)を受診させていなかった事業場は19事業場(26.4%)であった。

健康診断を受診した被災労働者44人中、何らかの所見が認められた者は32人(受診者の60.4%)であったが、これら有所見者に対し事後措置*1を講じた事業場は10事業場(31.3%)で、22事業場(68.7%)は講じていなかった。

(表5)被災労働者の健康診断及び事後措置の実施状況

実 施 事 項 等 事業場数 比率(%)
被災労働者の所属事業場数 72 -

被災労働者に健康診断を受診させなかった 19 26.4%
被災労働者に健康診断を受診させた 53 73.6%

所見が認められなかった 21 39.6%
所見が認められた 32 60.4%

事後措置*1を講じた 10 31.3%
事後措置を講じなかった 22 68.7%

*1 有所見者に対する事後措置

(1)医師等からの意見聴取

労働者の就業上の措置に関しその必要性の有無、講ずべき措置の内容に係る意見を聴取

(2)勤務軽減措置

医師等の意見を勘案し、必要があると認められるときは、その労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業転換、労働時間の短縮深夜業の回数減少等の措置を講じる

(3)保健指導の実施

医師、保健師による保健指導実施

(2) 労働時間の把握状況

被災労働者について、労働時間の把握を行っていなかった事業場は6事業場(8.3%)であった。

なお、労働時間の把握を行っていた事業場について、把握方法の内訳は、自己申告による事業場は32事業場(44.4%)、タイムカードは15事業場(20.8%)、IDカードは6事業場(8.3%)、日報は3事業場(4.2%)、これらの併用等は8事業場(11.1%)であった。

(3) 過重労働による健康障害防止対策の実施状況

過重労働による健康障害を発生させた時期に、医師による面接指導制度*1を導入していなかった事業場は44事業場で、全体の61.1%であった。

*1 事業者は、長時間労働により疲労が蓄積し健康障害のリスクが高まった労働者について、その健康の状況を把握し、これに応じて本人に対する指導を行うとともに、その結果を踏まえた措置を講じなければならないとされており、本人の申出に基づき、

(1)時間外・休日労働が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者については実施義務

(2)時間外・休日労働が1月当たり80時間を超える場合、事業場が定めた基準(例えば1月100時間又は2~6か月平均で1月80時間を超える、1月45時間を超える等)については努力義務

となっている。

5 過重労働による健康障害防止対策に関する東京労働局の取組について

(1) 平成21年の東京における労働者1人平均年間総実労働時間は、1,789時間(所定1,635時間、所定外154時間)と前年に比べ65時間減少したが、労働力調査による週労働時間別の雇用者の分布によると、依然として「労働時間分布の長短二極化」の状況にある。

(2) このような状況において、過重労働による健康障害が依然として後を絶たず、脳・心臓疾患や精神障害等の労災請求件数も高水準で推移していることから、東京労働局では、平成22年度においても「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(平成18年3月17日付け基発第 0317008号)等に基づき、

(1) 長時間労働の抑制に向けた取組の推進

改正労働基準法の規定の履行確保、適正な時間外労働協定の締結・届出について指導を行うこと

(2) 労働者の健康管理に係る措置の徹底

健康診断と健康診断実施後の措置、保健指導等の実施、長時間労働者に対する医師による面接指導等の実施、メンタルヘルス対策推進の指導を行うこと

(3) 労働時間管理、健康管理等に関する法令の遵守徹底のための監督指導等

過重労働による健康障害を発生させるおそれのある事業場に対する監督指導を強化し、労働基準関係法令違反には、厳正に対処していくこと

(4) 過重労働による健康障害防止運動の推進

本運動の推進月間である9月を中心に労使による過重労働防止対策の自主的促進を図るため、来る9月3日に産業保健フォーラムIN TOKYO 2010(九段会館)(別添リーフレット参照)を開催するほか、各署で開催する労働衛生週間説明会等あらゆる機会をとらえ集中的な周知啓発を行うこと

など積極的に対策を推進することとしている。

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