平成26年度 

◇平成27年3月の送検事例

事例 1

居酒屋経営者を逮捕・送検

 新宿労働基準監督署は,平成27年3月2日,居酒屋経営者を最低賃金法違反の疑いで逮捕し,平成27年3月3日,東京地方検察庁に同経営者を身柄と共に送検し,当該居酒屋を経営する法人も書類送検した。

〈事件の概要〉

 被疑会社は,東京都杉並区内で,不動産の賃貸業及び居酒屋3店舗を営む事業主,被疑者は同会社の代表取締役として,その事業全般を統括して管理する者であるが,被疑者は,被疑会社の業務に関し,法定の除外事由が無いのに,労働者Aの平成25年6月分賃金108,406円の全額をその所定支払期日である平成25年6月30日に支払わず,もって法で定める東京都最低賃金(当時の時間額850円)以上の賃金を支払わなかったもの。

<参考事項>

 平成23年1月1日から平成25年8月16日までの間,被疑会社の元労働者から,勤務した最後の月の給料が支払われない旨の賃金不払に関する申告が4件あった。 

 当署ではこの申告を受け,被疑者に対して,不払賃金を支払うよう行政指導を行ったが,被疑者はその行政指導に従わなかった。

 被疑者は,当署による再三の出頭要求に応じず,罪証隠滅のおそれもあったことなどから,逮捕のうえ,送検したものである。

事例 2

ドラグ・ショベルの用途外使用で死亡災害を起こした建設工事業者を書類送検


 三鷹労働基準監督署は,建設工事業者及び同社の工事部主任を,労働安全衛生法違反の容疑で,平成27年3月4日,東京地方検察庁立川支部に書類送検した。

〈事件の概要〉
 平成26年10月7日,東京都西東京市内の宅地造成工事現場において,工事部主任が,現場入り口の通路に敷設するため,重量約800キログラムの鉄板をドラグ・ショベルでつり上げた際,当該鉄板が落下し,約2メートル離れた場所にいた同社の作業員が当該鉄板と掘削溝及び地面との間にはさまれ,約2時間後に死亡したもの。

 捜査の結果,工事部主任は,ドラグ・ショベルで荷のつり上げをしてはならないことが法令で定められていることを知りながら,そのバケットにワイヤロープを固定せずにかけた状態で鉄板のつり上げ作業を行っていたことが判明した。

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事例 3

屋根張替作業中の墜落死亡災害で屋根工事会社を書類送検

 立川労働基準監督署は,労働安全衛生法違反容疑で,建築板金工事業者を平成27年3月18日,東京地方検察庁立川支部に書類送検した。

〈事件の概要〉

 平成26年10月28日,小平市内で行われた民間発注の屋根張替工事において,屋根上で屋根張り替えの作業に従事していた労働者(男性・64歳)が,木毛板(もくもうばん)を踏み抜き,高さ約12メートルを墜落して死亡する災害が発生した。屋根は薄い金属板でふかれていたが,張り替えのため,下地材である木毛板が露出しており,被災者はその箇所を踏み抜いた。

 労働安全衛生法では,事業者に対し,木毛板によりふかれた屋根の上で作業を行わせるにあたり,踏み抜きにより労働者に危険を及ぼすおそれがある場合には,同屋根に幅30センチメートル以上の歩み板を設け,防網を張る等踏み抜きによる労働者の危険を防止するための措置を講じることを義務づけているが,当該作業においては,これらの措置を講じず,もって労働者が墜落するおそれがある場所にかかる危険を防止するため必要な措置が講じられていなかったものである。

事例 4

最低賃金法違反容疑で書類送検

~賃金不払で貨物運送会社を送致~


 上野労働基準監督署は,貨物運送業者と同社の代表取締役を最低賃金法違反の容疑で,平成27年3月19日,東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉
 被疑会社は,台東区で貨物運送業を営む事業主,被疑者は被疑会社の代表取締役として同会社の業務一切を統括管理する者であるが,被疑者は,被疑会社の業務に関し,法定の除外事由がないにもかかわらず,労働者1名に対し,平成26年6月1日から同年6月30日までの同年6月分賃金合計161,140円をその所定支払日である平成26年6月25日に支払わず,もって,東京都最低賃金(当時1時間869円)以上の賃金を支払うべきところ支払わなかったものである。

 元労働者から当署に対し賃金不払いに対する行政指導を求める申告がなされ,当署から文書による行政指導を行ったが是正しなかったため,捜索・差押を実施して証拠資料を保全収集するなどして最低賃金不払で書類送検したものである。

 

事例 5

パートタイム労働者に違法な長時間労働を行わせたパン製造販売業者を書類送検

 亀戸労働基準監督署は,平成27年3月26日,労働基準法違反容疑で,パン製造販売業を営む会社の元東京工場エリアマネージャー(工場長)及び元工場サンドイッチ部門チームリーダー(部門長)を東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉

 東京工場サンドイッチ部門に所属するパートタイム労働者3名(時給900円~950円,1日の所定労働時間6時間)に対し,平成25年12月1日から同月31日までの間,最長で月139時間に達する時間外労働を行わせ,もって労働基準法第36条で定める時間外労働協定の延長時間の限度を超える違法な時間外労働を行わせていたもの。

  また,同期間,本来支払うべき時間外労働に対する割増賃金のうち3割程度(1月当たり最大で約11万円の時間外手当の不払が発生)の支払しかしていなかったもの。

〈過重労働撲滅に向けて〉

 厚生労働省では,長時間労働の抑制及び過重労働による健康障害防止対策の強化を喫緊の課題として,平成26年9月に厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減対策推進本部」が設置され,省をあげて取り組んでいるところであり,当署でも,過重労働等の撲滅に向けた対策推進のため,著しい過重労働により労働基準法違反が認められるなど重大又は悪質な事案に対しては司法処分を含め厳正な対応を強化することとしている。

事例 6

労災かくしで書類送検

~元請負人の責任者,関係請負人の代表取締役らを共犯で~


 東京労働局は,個人事業主及び同社へ工事を発注した会社の代表取締役,元請会社の支店の建築工事部門責任者らを労働安全衛生法違反の容疑で,平成27年3月27日,東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉
 個人事業主が下請負人として工事を請負った,元請会社の支店が施工する東京都千代田区内のマンション新築工事現場で,使用した年少労働者が平成24年6月21日に同現場の足場解体作業中に部材が落下し右手三指を負傷して,搬送先の病院で手術等を受けて8日間入院し,その後も療養のため休業するという労働災害が発生していたことが発覚した。
 この労働災害について,東京労働局で捜査したところ,個人事業主の被疑者が現場の関係請負人3名と共謀の上,同現場を管轄する中央労働基準監督署長に労働者死傷病報告が提出していなかった,いわゆる労災かくしを行った労働安全衛生法違反が判明した。
 また,元請負人の支店建築部長は,労働安全衛生法第29条第2項により担当する建築現場の関係請負人又は関係請負人の労働者が,労働安全衛生法又はこれに基づく命令の規定に違反しているときは,その法令違反を是正させる義務を負っているが,労災かくしによる労働安全衛生法違反の事実を関係請負人らから知らされた後も,労働者死傷病報告を行うよう指導するなどして関係請負人らに是正をさせなかったことも判明した。

事例 7

労災かくし(虚偽報告)を行った建設業者を書類送検

 

 大田労働基準監督署は,建設業者及び同社代表取締役を,労働安全衛生法違反の容疑で,平成27年3月27日,東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉
 被疑会社は,東京都大田区に本店を置き,鳶・土工事を請負う専門工事業者であるが,同社代表取締役は,同社所属の建設作業員が,平成25年6月14日,元方事業者が施工する東京都大田区内の大規模工事現場で外部足場を組み立て中,昇降階段部分の開口部で足を踏み外し,加療約2か月の傷害を負い,翌日から37日間休業した災害について,平成25年6月28日,大田労働基準監督署において,「本社敷地内の駐車場ではしごを降りている際に右足を踏み外し負傷した。」旨の内容の労働者死傷病報告書を提出し,虚偽の報告をしたもの。

事例 8

タイヤリサイクル会社における死亡事故

~法人と代表者を書類送検~


 青梅労働基準監督署は,リサイクル業者及び同社の代表取締役社長を,労働安全衛生法違反の容疑で,平成27年3月30日,東京地方検察庁立川支部に書類送検した。

〈事件の概要〉
 平成26年11月4日午前9時30頃,東京都西多摩郡に所在する,リサイクル業者の工場建屋内において,乗用車等のタイヤを切断する1次破砕機を運転中,同会社労働者に,同破砕機のスクレーパー(カス取り)及びその支柱に目詰まりした原材料であるタイヤ片を取り除く調整作業を行わせるにあたり,同調整作業中に同破砕機に作業中の労働者の身体が巻き込まれる危険があったにもかかわらず,機械の運転を停止せずに作業を行わせ,もって機械,器具その他の設備による危険を防止するため必要な措置を講じなかったものとして,労働安全衛生法違反の疑いで捜査を行ったものである。

事例 9

割増賃金不払いで書類送検

 大田労働基準監督署は,リネンサプライ業者及び同社代表取締役専務を労働基準法違反の容疑で,平成27年3月31日,東京地方検察庁に書類送検した。
 

〈事件の概要〉
 被疑会社リネンサプライ業者は,平成25年2月1日から平成25年9月30日までの間,同社東京事業部所属の労働者1名に対し,法定の労働時間を延長して労働させながら,通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金計1,117,439円を所定賃金支払日である毎月23日に支払わなかったものである。
 大田労働基準監督署は,労働者の申告に基づき,被疑会社に対する複数回にわたる監督において,法定の労働時間を超えて労働させているにもかかわらず,割増賃金が未払いである実態を把握し,再三是正を求めていたが,法違反を解消しなかったものである。


◇平成27年2月の送検事例

事例 1

同一解体工事現場における2件の労災かくしにつき下請業者を書類送検

 中央労働基準監督署は,同一解体工事現場で発生した下記2件の労災かくし被疑事件について,労働安全衛生法違反の容疑で,平成27年2月12日,東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉

・事案1
 平成24年12月4日,東京都千代田区内の解体工事現場において,現場の一次下請業者と雇用関係のあった現場作業員1名が,建物天井部分に設置された配管ダクトを切断するため,床上高さ約3メートルの梁上で作業をしていたところ,バランスを崩し梁上から落下し,腰部を強打し腰椎の圧迫骨折をするという労働災害が発生した。

 同作業員を雇用する一次下請業者は,現場所在地を所轄する中央労働基準監督署長に当該労働災害の報告書(労働者死傷病報告書)を遅滞なく提出しなければならなかったが,これを行わなかったこと(いわゆる「労災かくし」)が判明した。

・事案2

 平成24年11月10日,東京都千代田区内の解体工事現場において,現場の二次下請業者と雇用関係にある作業員1名が,前記一次下請業者から請け負った建物階段部分の清掃作業で階段を移動中,着地時に足を捻り,左足の靭帯損傷を負うという労働災害が発生した。

 二次下請業者は,現場所在地を所轄する中央労働基準監督署長に当該労働災害の報告書(労働者死傷病報告書)を遅滞なく提出しなければならなかったが,二次下請業者取締役社長は,一次下請業者の代表取締役と共謀のうえ,これを行わなかったこと(いわゆる「労災かくし」)が判明した。

事例 2

足場の解体作業中の墜落死亡災害で書類送検


 江戸川労働基準監督署は,平成24年4月20日に江戸川区内新大橋通りの船堀橋補修工事において発生した墜落死亡労働災害について,下請工事業者と同社の工事責任者を労働安全衛生法違反の容疑で,平成27年2月13日,東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉
 平成24年4月20日,大手橋梁工事会社の下請として、工事業者が施工した船堀橋補修工事において、つり足場の朝顔(作業中に足場から資材が落下すること等を防止するために設ける斜めの覆い)の解体作業中、はしごを立てかけていた朝顔が外側に倒れ、作業中の労働者がはしごとともに約7.7メートル下の道路上に墜落死亡する労働災害が発生した。

 捜査の結果、つり足場の上での使用を禁じているはしごを用いて作業させたことが判明したことから、書類送検したものである。


◇平成26年11月の送検事例

事例 1

年少労働者の死亡災害で事業者を書類送検

~建設工事現場での重機災害~


 八王子労働基準監督署は,建設会社及び同社の土木部長を労働安全衛生法違反の容疑で,平成26年11月6日,東京地方検察庁立川支部に書類送検した。

〈事件の概要〉
 平成25年1月4日(金)、東京都多摩市中沢2丁目内で行われていた建設工事現場において、外構工事を請け負っていた2次下請の建設会社の労働者Aが、ドラグ・ショベル(重量:約1.5トン)を使用して現場土中に埋設していた既存の雨水溝(重量:約600kg)を除去するため、ドラグ・ショベルで雨水溝を掘り起こしたのち、同ドラグ・ショベルのバケットと雨水溝とにロープをかけて吊り上げて旋回を始めたところ、同雨水溝の重みでドラグ・ショベルがバランスを崩し、右側方向に転倒、同位置にいた年少労働者B(被災時:17歳)が同ドラグ・ショベルのアーム部分の下敷きとなって死亡したもの。
 捜査したところ、建設会社の労働者で土木部長Cが、労働安全衛生法で禁止されているドラグ・ショベルの用途外使用(荷の吊り上げ)を行わせていたことが判明した。

〈建設現場での災害発生状況と東京労働局の対応〉

 東京労働局管内において平成25年中に発生した労働災害の状況を見ると,同年中に発生した死亡災害54件の半数にあたる27件が建設業で発生しており,休業4日以上の労働災害の場合でも全業種9,639件の約15.2%に相当する1,472件が建設業で発生していることから,依然,建設業における死亡災害及び休業4日以上の災害が高水準にある。
 また,建設業において発生した休業4日以上の労働災害のうち,建設用機械に起因する労働災害は71件で,その内2件が死亡災害である。
 建設用機械に起因する労働災害のうち,休業4日以上の労働災害の59件が今回の災害と同種の,建設用機械への「激突」,「はさまれ」,「巻き込まれ」に起因するものである。
 このような状況を踏まえ,東京労働局では,建設現場における労働災害の減少を重点課題とした監督指導を各労働基準監督署において毎年実施しており,平成25年中も935現場に臨検監督を実施することで1,950件の事業場に対して監督指導を行い,内67.6%にあたる1,319件の事業場に対して何らかの法違反又は指導事項が認められたことから,その法違反等に対する改善と再発防止について指導することで建設現場における労働災害の未然防止に尽くしている。
 (平成26年7月31日現在 労働基準監督署に提出された労働者死傷病報告から分析)

事例 2

住宅の屋根葺替え工事中の墜落重傷災害でリフォーム会社等を書類送検

 立川労働基準監督署は,労働安全衛生法違反容疑で,住宅リフォーム工事会社,同社代表取締役及び下請の屋根工事業者を,平成26年11月18日,東京地方検察庁立川支部に書類送検した。

〈事件の概要〉
 平成25年6月3日,東京都国分寺市内の木造2階建て個人住宅の1階の屋根の葺替え工事で,下請の屋根工事業者の労働者(男48歳)が,屋根から約3.5メートル下の道路上へ墜落し,右踵及び左足の骨折等の重傷を負う労働災害が発生し,現在も治療を継続している。

 労働安全衛生法では,元請及び下請の事業者に対し,高さが2メートル以上の作業床の端で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には,墜落防止のための手すり等を設けることを義務付けているが,当現場においては,建物の周りに足場を組み立てることにより1階の屋根の周りに手すりを設けることが可能であったのに,手すり等を設けていなかったものである。

〈賃金不払への対応〉

 立川労働基準監督署管内における平成25年1月から10月までのリフォーム工事・改修工事の休業4日以上の災害は21件発生しており,うち「転落・墜落」による災害は6件であった。また,平成26年同期に発生した災害22件のうち「墜落・転落」によるものは13件と倍増しており,このうち2件が死亡事故となっている。

 今後,立川労働基準監督署は,労働災害防止への取組を強化していく予定である。

事例 3

医系予備校会社及びその代表者を最低賃金法違反で書類送検


 渋谷労働基準監督署は,最低賃金法違反容疑で,医系予備校会社及びその代表取締役を平成26年11月27日,東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉
 被疑会社は,東京本校及び大阪校の医系予備校2校を運営し,教育・研究業を営んでいたもの(当時在籍していた労働者は75名程度)であるが、東京本校及び大阪校の労働者16名に対する平成24年1月分賃金(最低賃金分518,583円)を所定支払日である同年2月29日に、東京校の労働者8名に対する同年2月分賃金(最低賃金分215,391円)を所定支払日である同年4月2日に支払わなかったものである。(当時の東京都最低賃金は時間額837円,大阪府最低賃金は時間額786円である。)

管内の賃金不払の申告事件等

 渋谷労働基準監督署管内では,賃金不払に関する申告事件が,平成24年に633件,平成25年に558件発生しており,悪質なものは司法事件として捜査するなど,厳正に対応している。

事例 4

違法な時間外労働で警備業者を書類送検


 中央労働基準監督署は、平成20年4月から平成25年7月までの間4回にわたり違法な時間外労働の是正を指導するも法違反を繰り返した事業者等を労働基準法違反の容疑で、平成26年11月28日、東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉
 被疑会社は、労働基準法第36条で定める時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)において、同法第32条で定める法定労働時間を超える時間外労働(いわゆる延長時間)は1か月につき45時間までとし、延長時間が45時間を超えざるを得ない特別の事情がある場合には年6回(6か月)を限度として延長時間を80時間までとしていた。

 しかし、被疑会社は、平成25年4月16日から同年10月15日までの6か月間に延長時間が1か月45時間を超えたことにより、同年10月16日以降は延長時間を1か月45時間までとしなければならないにもかかわらず、同年10月16日から11月15日までの1か月につき延長時間が45時間を超えていたことが判明した。

 中央労働基準監督署は、被疑会社に対する4回にわたる臨検監督において、36協定未締結、36協定で定める延長時間の限度を超える時間外労働等の事態を把握し、その都度、是正を求めていたが、法違反が繰り返されたため、労働基準法違反として捜査に着手したものである。

〈参考〉

 法定労働時間を超える時間外労働を行わせる場合には、労働基準法第36条において、時間外労働に関する協定(36協定)を締結し、労働基準監督署長に届け出ることを要件している。

 労働基準法第36条は、時間外労働・休日労働を無制限に認める趣旨ではなく、延長時間の限度は原則として「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(限度基準)」に基づき、本件においては、1か月45時間を超えないものとしなければならない。

 しかし、この限度基準を超えて時間外労働を行わせざるを得ない特別の事情がある場合には、全体として1年の半分を超えない範囲(1か月の場合は6回(6か月)以内)で、一定の手続きを経て、上記限度基準を超えて協定した時間(本件においては、1か月につき80時間)まで労働時間を延長することができることになっている。


◇平成26年10月の送検事例

事例 1

解体工事現場の元請と下請を労働安全衛生法違反容疑で書類送検

-墜落防止措置を怠り作業員が墜落死-


 中央労働基準監督署は,解体工事現場の元請建設株式会社ほか1名と下請建設会社ほか1名を労働安全衛生法違反の容疑で,平成26年10月16日,東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉
 平成25年10月11日午後3時45分頃,元請建設会社が施工する東京都千代田区内のビル解体工事現場において,各階から1階までを貫く約1.5メートル四方の床面の開口部からビル内各階に残る什器類等の廃棄物を1階まで落とす作業を行わせるに当たり,6階で作業していた派遣労働者が,この床開口部端から約15メートル下の1階まで墜落し死亡したものである。

  労働安全衛生法では,高さが2メートル以上の作業床の端,開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には,囲い,手すり,覆い等を設けることを義務づけているが,捜査の結果,被疑者らは,労働者の危険を防止するために法令上必要な墜落防止措置を講じていなかったことが判明した。

〈東京都内(建設業)の災害発生状況〉

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事例 2

土木工事現場で労災かくし

-建設業者と代表者を書類送検-


 青梅労働基準監督署は、建設会社及び同社の代表取締役社長を、労働安全衛生法違反の容疑で、平成26年10月20日、東京地方検察庁立川支部に書類送検した。

〈事件の概要〉
 平成25年5月13日、JR五日市線,熊川駅と東秋留駅間の多摩川に架かる橋梁下右岸河川敷(東京都あきる野市平沢)における立木伐採工事において、建設会社の労働者Bが伐採した立木の幹が落下して、付近で作業を行っていた同社所属の労働者Aの頭部から背部に激突した。その結果Aは加療3ヶ月を要する怪我を負い、負傷翌日から4日間以上休業した。

 同社は当該災害について、管轄である青梅労働基準監督署長に遅滞なく労働者死傷病報告書を提出しなければならないのに、これをせず、災害発生からおよそ5か月が経過した平成25年10月8日になって同報告書を提出したものである。

〈労災かくしへの対応〉

 本件は、労働災害の発生を隠蔽するため、労働者死傷病報告を遅滞なく所轄労働基準監督署長に提出しなかったいわゆる「労災かくし」事案である。

 「労災かくし」が行われることは、災害原因究明、同種災害の防止対策の確立等、労働者の安全を確保する機会を失わせるほか、被災労働者が適正に労災補償を受ける権利を侵害することに繋がるものである。

労働基準行政においては「労災かくし」の排除を推進しており、あらゆる機会を通じて事業者に労働者死傷病報告の提出を周知・啓発しているもので、当署では今後も引き続き、当該違反行為に対しては厳正な対応を行っていく方針である。


◇平成26年9月の送検事例

事例 1

託児所経営者を最低賃金法違反の疑いで逮捕・送検

 

 八王子労働基準監督署町田支署長は、平成26年9月10日、託児所経営者を最低賃金法違反の疑いで逮捕し、平成26年9月11日、東京地方検察庁立川支部に同経営者を身柄とともに送検し、当該託児所を経営する法人も書類送検した。

〈事件の概要〉
 被疑会社は、東京都多摩市に登記簿上の本店を置き、東京都町田市において、託児所を営む事業主、被疑者は、同会社の代表取締役として、その事業全般を統括管理するものであるが、被疑者は、被疑会社の業務に関し、法定の除外事由がないのに、労働者Aの平成24年1月分賃金17,250円及び労働者Bの同年2月分賃金80,690円の合計97,940円を所定の各賃金支払期日である同年2月29日、同年4月4日に全額支払わず、もって法で定める東京都最低賃金を支払わなかったもの。

〈参考事項〉

 被疑会社は、平成23年7月に託児所の運営を開始するまでは、清掃業を営んでいたが、清掃業を営んでいた平成23年4月から労働者に対する賃金不払を繰り返し発生させ、平成24年10月までの間に、労働者14名(清掃業従事者6名、託児業従事者8名)が、不払賃金(合計約221万6千円)の行政指導による救済を求め八王子労働基準監督署町田支署に申告に及んだ。
 八王子労働基準監督署町田支署では当該申告を受け、被疑者に対して、不払賃金を支払うよう行政指導を行ったが、被疑者は「退職した労働者には支払わない」等と主張して、当支署の行政指導に従わず、現在も支払われていない状況である。
 被疑者は、当支署による再三の出頭要求に応じず、罪証隠滅のおそれもあったことなどから、逮捕の上、送検したものである。


◇平成26年7月の送検事例

事例 1

墜落災害を発生させた建築現場の下請負業者を書類送検


 三鷹労働基準監督署は、建築現場の下請負業者の代表を、労働安全衛生法違反の容疑で、平成26年7月18日、東京地方検察庁立川支部に書類送検した。

〈事件の概要〉
 平成26年4月5日午前11時頃、東京都西東京市の鉄骨造3階建てビル新築工事現場の屋上部において、現場の4次下請負業者の代表及びその作業員が、業務用エレベーター昇降路屋根部の軽量コンクリート板(ALC板)の取り付け作業を行っていたところ、作業員がエレベーター昇降路の開口部から約10メートル下の地面に墜落し負傷したもので、作業員は未だ入院中である。
捜査したところ、下請負業者の代表は、墜落のおそれのあるエレベーター昇降路の開口部に、囲い等を設けることが著しく困難なため墜落防止用のネットを設置するなどして作業を行わなければならないことを知りながら、これをせずに作業をさせたことが判明したものである。

〈墜落災害について〉

 平成25年に東京労働局管内で発生した休業4日以上の労働災害は9639件、死亡災害は54件であり、そのうち建設業では休業4日以上の労働災害は1472件(約15%)、死亡災害は26件(48%)となっている。
建設業の休業4日以上の労働災害のうち約34%(499件)が、また死亡災害のうち約42%(11件)が墜落又は転落による災害である。
 建設業での墜落・転落による災害は、従来から発生すると重篤な災害になることが多いことから、昨年から取り組んでいる「第12次東京労働局労働災害防止計画」の中でも墜落・転落災害の防止は重点対策と位置づけられていた。
当署でも、建設現場に対する臨検監督や建設業者を対象とした集団指導など、あらゆる機会を通じて指導啓発し、墜落災害防止措置の徹底のための遵法意識の向上に努めてきたところである。

事例 2

賃金不払を繰り返した事業者を書類送検


 中央労働基準監督署は、経営誌発行会社及び同社の代表取締役を最低賃金法違反の容疑で、平成26年7月30日、東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉
 被疑会社は、主に経営誌の発行を業としているものであるが、労働者2名に対する平成25年3月16日から同年4月15日までの賃金総額200,014円を所定支払日である平成25年4月28日に全額支払わず、適用される東京都最低賃金額(1時間850円)以上の賃金を支払わなかったもの

〈賃金不払への対応〉

 平成25年2月以降、複数の労働者から当署に対し、「賃金が不払となっている」との申告がなされたことから、当署においてその都度事実関係を確認の上、被疑会社に対し法違反を是正するよう文書での勧告等の行政指導を繰り返し行ってきたが、いずれも是正されることがなかったため書類送検に踏み切ったものである。
労働基準監督署では、繰り返し申告がなされ、労働基準関係法令違反が認められ行政指導を行っても是正されない事業場など重大悪質な事案に対しては書類送検を含め厳正に対処することとしている。


◇平成26年6月の送検事例

事例 1

土木工事現場で労災かくし
-建設業者と代表者を書類送検-


 青梅労働基準監督署は、建設会社及び代表取締役会長を、労働安全衛生法違反の容疑で、平成26年6月12日、東京地方検察庁立川支部に書類送検した。

〈事件の概要〉
 平成25年2月7日、西多摩郡檜原村内の林道開設工事現場において、作業中であった労働者1名の左足に、斜面から転落してきた石が当たり負傷し、負傷翌日から10日間休業した。
建設会社は当該災害について、管轄である青梅労働基準監督署長に遅滞なく労働者死傷病報告書を提出しなければならないのに、これをせず、災害発生から7か月が経過した平成25年9月12日になって同報告書を提出したものである。

〈労災かくしへの対応〉

 本件は、労働災害の発生を隠蔽するため、労働者死傷病報告を遅滞なく所轄労働基準監督署長に提出しなかったいわゆる「労災かくし」事案である。
 「労災かくし」が行われることは、災害原因究明、同種災害の防止対策の確立等、労働者の安全を確保する機会を失わせるほか、被災労働者が適正に労災補償を受ける権利を侵害することに繋がるものである。
労働基準行政においては「労災かくし」の排除を推進しており、あらゆる機会を通じて事業者に労働者死傷病報告の提出を周知・啓発しているもので、当署では今後も引き続き、当該違反行為に対しては厳正な対応を行っていく方針である。

事例 2

賃金不払残業を行わせたスーパーマーケット経営会社を書類送検


 江戸川労働基準監督署長は、スーパーマーケット経営会社及び同社代表取締役等を労働基準法違反の容疑で、平成26年6月2日、東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉
第1 スーパーマーケット経営会社代表取締役は、同社が経営する東京都江戸川区内に所在する食料品スーパーマーケット2店舖において、平成25年5月21日から平成25年7月20日の間、労働者32名を法定の労働時間を延長して労働させながら、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金合計654万3,783円を支払わなかったものである。
第2 スーパーマーケット経営会社に対しては、江戸川労働基準監督署労働基準監督官が、割増賃金の不払につき是正指導し、その是正措置結果について、労働基準法第104条の2第2項に基づき是正報告をするよう求めていたが、同社代表取締役は、同社部長A及び課長Bと共謀し、平成25年10月1日、同労働基準監督官に対し、実際には支払をしていないのに、同社労働者71名の過去の賃金不払残業に対する割増賃金2710万0,821円を遡及して支払ったとする虚偽の内容を記載した是正報告書を提出したものである。

〈捜査の端緒〉

 同社に対しては、平成24年8月、平成25年6月に割増賃金の不払について是正するよう監督指導を行ってきたが、同社はその指導にもかかわらず違反行為を続けてきたものであることから捜査に着手したものである。
また、同社は、当署の是正指導に対し、不払の割増賃金を遡及して支払ったとする是正報告を行っていたが、捜査の過程で、本社ほかを家宅捜索したところ、同社は実際には遡及支払を行っておらず、同報告が虚偽の報告であったことが判明したものである。

〈賃金不払残業への対応〉

 労働基準監督署では、事業者に対して適正な労働時間管理の徹底を図り、賃金不払残業を起こさせないことを重点とした監督指導を実施しています。
 また、是正指導にも関わらず改善の意欲が認められず、賃金不払残業を繰り返す、又は労働基準監督署に対し虚偽の報告を行うなど重大悪質な事業者に対しては、書類送検を含めて厳正に対処しています。


◇平成26年5月の送検事例

事例 1

スレート踏み抜きによる墜落死亡事故につき一次下請工事業者を書類送検


 池袋労働基準監督署長は、防水加工工事業者及び同社の代表取締役を、労働安全衛生法違反の容疑で、平成26年5月8日、東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉
 平成26年1月30日、被疑会社が、一次下請業者として、東京都板橋区内の葬儀場において、外壁補修工事を行っていたところ、被疑者の指揮命令下で作業をしていた労働者(男性 63歳)が、葬儀場2階北東部に付随する屋根のスレートで葺かれた部分を踏み抜き、コンクリート地面まで5.5メートル墜落し、平成26年1月31日病院にて死亡したもの。
 労働安全衛生法及び労働安全衛生規則上、事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所に係る危険を防止するために必要な措置を講じなければならず、特にスレート上で労働者が作業を行う場合には、幅が30センチメートル以上の歩み板を設ける等墜落防止措置を講じなければならないところ、被疑者は何ら墜落防止措置を講じることなく労働者に作業を行わせ、法令上事業者に義務付けられた措置義務を怠ったものである。

事例 2

建設工事現場で落下した吊り荷による死亡災害について工事業者を書類送検


 渋谷労働基準監督署長は、ビルの新築工事現場において発生したクレーンの吊り荷の落下による死亡災害について、工事業者を労働安全衛生法違反の容疑で、平成26年5月14日、東京地方検察庁に書類送検した。


〈事件の概要〉
 平成25年5月13日、A建設株式会社が元請として施工する東京都渋谷区内所在の5階建ビル新築工事現場において、クレーンの吊り荷が落下し、建設現場敷地内の地上を通行していた型枠工事業者の労働者(男性 64歳)の頭部に直撃して同人が死亡するという災害が発生した。
捜査の結果、クレーンを使用していた型枠工事業者Bが、クレーンに吊り上げられている荷の落下による危険を防止するため、荷の下への労働者の立ち入り禁止措置を講じていなかったことが判明したものである。

<建設現場での飛来・落下災害発生状況>
 東京労働局管内で平成25年に発生した労働災害発生状況(速報値)を見ると、死亡者数は全産業で53人、このうち建設業で26人であり、経年的にみても建設業は常に全産業の死亡災害の3分の1以上を占め、重篤な災害を発生させている業種である。

    表1 平成21年以降の建設業における労働災害死傷者数の推移 (東京都内)

       平成

21年

22年

23年

24年

25年

死傷災害

1,689

1,339

1,439

1,429

1,451

 うち飛来・落下

  (割合・%)

187

(11.0%)

137

(10.2%)

154

(10.7%)

174

(12.1%)

160

(11.0%)

死亡災害

20

25

26

26

26

 うち飛来・落下

   (割合・%)

2

(10.0%)

3

(12.0%)

2

(7.6%)

1

(3.8%)

3

(11.5%)

   そのうち、飛来落下による災害は、死傷災害、死亡災害ともに1割程度を占め、労働災害の防止に努めている。

◇平成26年4月の送検事例

事例 1

労災かくしで個人事業主を書類送検
―死亡災害報告を1年5か月間放置―


 新宿労働基準監督署長は、照明器具交換等の業務を行う業者を労働安全衛生法違反の容疑で、平成26年4月17日、東京地方検察庁に書類送検した。

〈事件の概要〉

 平成24年6月9日、東京都杉並区内のマンションにおいて、マンション共用部分の電球交換を行っていた労働者A(男性、当時61歳)が脚立から転落し、脳挫傷等により同日死亡する労働災害が発生した。
 労働安全衛生法では、死亡災害について、遅滞なく所轄労働基準監督署長に労働者死傷病報告書を提出するよう義務づけているが、照明器具交換等の業務を行う業者は同報告書を1年5か月間提出せず、災害の発生を隠蔽しようとしたものである。

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