◎ |
家内労働者の定義(法第2条第2項)
次の五つの要件をすべて備えたものをいいます。
1 |
製造・加工業者や販売業者(問屋など)又はこれらの請負業者(請負的仲介人を含みます。)から委託を受けること。
〔一般家庭からセーター編みや洋服の仕立てを頼まれる場合は、家内労働者とはなりません。〕 |
2 |
物品の提供を受け、その物品を部品、附属品又は原材料とする物品の製造、加工等に従事すること。
〔物品の販売などのセールスマン、運送などの仕事をする者は家内労働者とはなりません。〕 |
3 |
委託業者の業務の目的である物品の製造加工などを行うこと。 |
4 |
主として、労働の対償を得るために働くものであること。 |
5 |
自己ひとりで、又は同居の家族とともに仕事をし、常態として他人を使用しないこと。 |
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◎ |
委託者の定義(法第2条第3項)
次の四つの要件をすべて備えたものをいいます。
1 |
製造・加工業者や販売業者(問屋など)又はこれらの請負業者(請負的仲介人を含みます。)であること。〔運送業者や建築業者は委託者とはなりません。〕 |
2 |
その業務の目的物である物品について、仕事を委託すること。
〔例えば、電機メーカーがテレビやラジオのコイルの組み立てを依頼するときは委託者になりますが、創立記念日に社員に配るメダルの加工を委託するときは委託者とはなりません。〕 |
3 |
仕事を委託するときに、原則として、原材料などの物品を提供して、その物品を部品、附属品又は原材料とする物品の製造、加工等を頼むこと。 |
4 |
家内労働者に直接仕事を委託すること。
〔直接家内労働者に委託しないで、委託者に委託する場合や、下請企業に委託する場合には、委託者とはなりません。〕
(注) |
平成2年3月31日付け基発第184号、婦発第57号により家内労働法におけるワープロ作業の取り扱いについて、次の点が明確化されています。
(1) |
原稿に従ったワープロ操作を行い、かつ、当該ワープロ操作により発生した電気信号をフロッピーディスクその他の外部記憶媒体(以下「フロッピーディスク等」という。)に保存する作業は、家内労働法にいう「加工」に該当するものであること。 |
(2) |
フロッピーディスク等の提供又は売渡しがあった場合は、家内労働法にいう「物品」の提供又は売渡しがあったものとすること。 |
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◎ |
補助者の定義(法第2条第4項)
補助者とは、家内労働者と同居している親族で、家内労働者の仕事を手伝っている人をいいます。 |
◎ |
家内労働手帳(法第3条)
当事者間の無用の紛争を防止するため、委託者は、家内労働者に家内労働手帳を交付し委託条件を記入しなければならないと定められており、記入すべき内容は次のとおりとなっています。
1 最初の委託の原材料等の引渡しのときまでに、次の事項を記入した「家
内労働手帳」を交付する。
・家内労働者の氏名 ・委託者の氏名 ・営業所の名称・所在地
・工賃の支払方法その他の委託条件等
2 原材料の受け渡しのつど
・委託業務の内容 ・工賃単価 ・工賃の支払い期日 ・納品の期日等
3 物品の受け渡しのつど
・受領年月日 ・受領した物品の数量
4 工賃支払のつど
・支払年月日 ・支払工賃額
家内労働手帳は、様式が定められていますが、必要な事項を具備していれば、定められた様式以外のもの(例えば伝票式のもの)でもさしつかえありません。また、相手方の承諾を得て、コンピュータ等を利用して作成した電磁的記録(メール、フロッピーディスク等)によって交付することもできます。
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◎ |
就業時間(法第4条)
家内労働者は、誰からもその就業時間を管理されることがなく、いつでも自由に就業することができますが、際限なしに長時間就業すると健康を害したり、相互間の過当競争により工賃単価が低下する等の弊害を招くおそれがあります。
このようなことがないように、委託者は、家内労働者や補助者が長時間の就業をしなければならないような委託をしないように努めなければなりません。
また、家内労働者は、そのような委託を受けないように努めなければなりません。
都道府県労働局長は、必要があるときは、審議会の意見を聞いて、一定の地域内で家内労働者が業務に従事する時間の適正化を図るために、必要な措置をとることを委託者及び家内労働者に勧告できることになっています。 |
◎ |
委託の打ち切りの予告(法第5条)
家内労働者は、工賃で生計をたてたり、工賃を生計の補助にあてたりしていますので、突然、その仕事を打ち切られると大きな影響を受けることになります。
したがって、委託者は、同じ家内労働者に継続して6か月以上委託している場合で、業務の都合などによって委託を打ち切ろうとするときには、その家内労働者にただちにそのことを予告するように努めなければなりません。 |
◎ |
工賃の支払(法第6条)
工賃の支払が遅れたり、全く支払われなかったりすると、家内労働者は生活に困ることになりますので、このようなことがないように、この法律では、委託者の工賃の支払いについて、次のとおり定めています。
1 |
工賃は、原則として、通貨で、その全額を支払わなければなりません。
しかし、家内労働者の同意があれば、(1)郵便為替での支払、(2)銀行など金融機関に対する預金や貯金口座への振込み、(3)郵便振替口座への払込みや振替えなどによる支払いでもよいことになっています。 |
2 |
工賃は、原則として、家内労働者から物品を受領した日から1か月以内に支払わなければなりません。
また、毎月一定の日を工賃締切日としている場合には、その工賃締切日までに受け取った物品の全部の工賃を、その締切日から1か月以内に支払わなければなりません。 |
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◎ |
工賃の支払場所等(法第7条)
委託者は、工賃の支払いや原材料、製品などの受渡しを、家内労働者から申出のあったときや、特別の事情のあるとき以外は、家内労働者が実際に作業に従事する場所で行うように努めなければなりません。 |
◎ |
最低工賃(法第8条、第14条)
最低工賃とは、ある物品について、その一定の単位ごとに工賃の最低額を決めるものです。厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域内で一定の業務に従事する工賃の低い家内労働者の労働条件を改善するために必要があると認めるときは、審議会の意見を聞いて、家内労働者と委託者に適用される最低工賃を決定することができます。
また、家内労働者又は委託者を代表する者は、厚生労働大臣又は都道府県労働局長に対し、その家内労働者や委託者に適用される最低工賃の決定や、現に適用されている最低工賃の改正又は廃止の決定をするよう申し出ることができます。
最低工賃が決まれば、委託者は、決められた最低工賃額以上の工賃を支払わなければなりません。また、委託者が最低工賃額に満たない工賃額を家内労働者と取り決めたとしても、その取り決めは無効であり、やはり最低工賃額以上の工賃を支払わなければなりません。
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◎ |
安全及び衛生に関する措置(法第17条)
家内労働は、一般的に家内労働者の自宅を作業場として行われ、その作業環境は、家内労働者自らが管理しているので、そこから発生する危害については、すべて委託者の責任ということはできませんが、委託者が、家内労働者に一定の機械器具又は原材料を譲り渡したり、提供したりする場合には、これらによる危害を防止するため、委託者は、次のような措置を講じなければなりません。
1 |
プレス機械などについては、安全装置を取り付けること。 |
2 |
安全装置等について定められた規格を具備していることを確認すること。 |
3 |
モーター、ハブ盤などについては覆いを取り付けること。 |
4 |
危害防止のための「作業心得」などの書面を交付すること。 |
5 |
有機溶剤を含んだ接着剤などの有害物を譲渡、提供する場合には、それらが漏れたり発散したりするおそれのない容器を使用すること。また、容器の見やすいところに有害物の名称や取扱い上の注意事項を書くこと。 |
以上のほか、家内労働者の危害防止のため、委託者が心がけなければならないこととして、
1 |
18歳未満の者や女性が、手押しかんな盤の取扱いの業務、鉛等の蒸気又は粉じんを発散する場所における業務など一定の危険又は有害な業務に従事することとなる委託をしないこと。 |
2 |
家内労働者が、危害防止のために安全装置その他の設備を設置するとき、又は健康診断を受けるときには、それに必要な援助を行うよう努めること。 |
などがあります。
また、家内労働者も危害を防止するため、守らなければならないこととして、
1 |
一定の危険又は有害な業務に従事する場合には、必要な保護具を使用すること。 |
2 |
発火性の物品等危険物を取り扱う場合には、定められた取扱い上の注意事項を守ること。 |
3 |
委託者から危険防止のため「作業心得」などの書面を交付されたときは、作業場の見やすい場所に掲示しておくこと。 |
4 |
家内労働者が自分で調達した有機溶剤を含んだ接着剤などの有害物を使用するときは、前出の委託者の講じなければならない措置で掲げた5の措置を講じること。 |
などがあります。
以上のほか、危害防止のため、家内労働者が心がけなければならないこととして、
1 |
家内労働者が一定の機械器具を自分で調達するときには、委託者と同じような措置(前出の委託者の講じなければならない措置で掲げた1、2及び3の措置)を講じるよう努めること。 |
2 |
屋内作業場において、有機溶剤、鉛等を取り扱う業務及び研ま材を使用して動力により研まする業務に従事する場合には、局所排気装置等を設置するよう努めること。 |
などがあります。
委託者や家内労働者がこのような措置をとらない場合には、都道府県労働局長や労働基準監督署長は、危険を防止するために、委託者又は家内労働者に対して、委託や受託を禁止したり、機械、原材料などの使用の停止を命じたりすることができます。 |
◎ |
届出(法第26条)
委託者は、次の届を労働基準監督署に提出しなければなりません。
1 |
委託状況届
委託者は、家内労働法にいう委託者になった場合には遅滞なく、それ以後は毎年4月1日現在の状況について4月30日までに、委託業務の内容、家内労働者数などを記入した委託状況届を労働基準監督署に提出しなければなりません。
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2 |
家内労働死傷病届
委託者は、委託した業務のため、家内労働者がけがをしたり、病気になったりして、4日以上仕事を休んだ場合には、家内労働死傷病届を遅滞なく労働基準監督署に提出しなければなりません。
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◎ |
帳簿の備付け(法第27条)
委託者は、家内労働者各人別に、家内労働者の氏名や工賃支払額など、必要な事項を記入した帳簿を作って、営業所に備え付けておかなければなりません。なお、帳簿は電子データによるものでも差し支えありません。
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◎ |
申告(法第32条)
家内労働者や補助者は、この法律又はこの法律に基づく命令に違反する事実が委託者にある場合には、都道府県労働局又は労働基準監督署に申告することができます。
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◎ |
罰則(法第33条~第36条)
これまで説明した事項のうち、努力義務になっているもの以外は、それに違反すればすべて罰則の適用があります。
また、委託者の代理人、使用人その他の従業者が違反行為をしたときは、本人が罰せられるだけではなく、委託者にも罰金刑が科されます。 |