紛争調整委員会によるあっせん事例

《事例1》 労働条件の引下げに関する紛争

事案の概要
  労働者Aさんは、X社において管理職として勤務していた。Aさんは、病気療養のため約1か月間休業して勤務に復帰したところ、身分を管理職から一般職扱いとして賃金を25%引き下げると通告され、当月の末日をもって退職した。
  Aさんは、25%の賃金引下げに納得できないとして、引下げ分(通告から退職までの1か月分)の支払を求めてあっせん申請した。

 

申請人(労働者)の主張
  病気療養から復帰してすぐに賃金引下げを通告された。賃金引下げの理由については、欠勤が多いといったことを言われたが、納得できない。

被申請人(会社)の主張
  Aさんの賃金は管理職であることを考慮して決定したものであるが、Aさんは、管理職の立場にありながら、欠勤が多く、同僚社員や取引先とのコミュニケーションがとれなかった。このため、Aさんを管理職から外して一般社員扱いとし、併せて賃金を25%減額したものである。賃金減額の話をしたとき、Aさんからは何の反論もなかった。

あっせんの結果
  あっせん委員は、賃金を含む労働条件が労使間の合意によって変更することができることをX社に説明して歩み寄りによる和解を求めた。これを受けて、X社は、賃金の引下げをAさんに伝えた際Aさんから反論はなかったものの明確な同意も得ていなかった点を踏まえて引下げ分全額を支払うことに同意し、和解が成立した。

*参考
労働契約法

《事例2》 採用内定取消しに関する紛争

事案の概要
  Y社は労働者派遣業を営むものであるが、ある会社担当者から、労働者派遣契約の内諾を得たことから、新たに派遣労働者を募集した。Bさんは、これに応募し、Y社から採用内定を受け、派遣先事業場において作業説明を受けた。
  しかし、その後Bさんを派遣する予定であった労働者派遣契約が不成立となったことから、Y社は、当初の予定とは別の派遣先を紹介することをBさんに提案したが拒否されたので、Bさんの採用内定を取り消した。
  Bさんは、採用内定取消しによって受けた精神的苦痛に対する慰謝料として、予定されていた賃金3か月相当分の支払を求めてあっせん申請した。

 

申請人(労働者)の主張
  Y社からは採用内定後の会社説明会において作業開始日が伝えられており、作業開始の数日前には派遣先において作業の説明も受けた。それなのに、Y社担当者から作業開始日が延期されたとの連絡が2回あり、最終的には採用内定が取り消されてしまった。
  会社の対応に納得できない。

被申請人(会社)の主張
  ある会社の担当者から労働者派遣の依頼があり、そのための要員としてBさんを含む2名の労働者を採用することとした。
  しかし、Bさんらを派遣する予定としていた会社の担当者から、当社とは別の派遣会社との契約が成立したため当社との話は無かったことにしてほしいと言われ、派遣契約は不成立となった。
  そのため、Bさんに対しては別の仕事を紹介することで納得してもらえないかと話をしたが、当社での勤務を拒否された。

あっせんの結果
  あっせん委員は、派遣契約の不成立についてはY社に同情の余地があるものの、契約の不成立にはBさんに何ら関係が無く、また、Y社が派遣先との正式な契約がない状態のまま、見切り発車的にBさんらの採用を内定したことに問題があったのではないかと指摘した。一方、Bさんに対しては、派遣契約不成立後にY社が別な派遣先を紹介することを提案したのにもかかわらずこれを拒否した点も踏まえて譲歩するよう勧めた結果、Y社が予定されていた賃金額1か月分の約8割に相当する額を支払うことで両者が合意し、和解が成立した。

《事例3》 損害賠償に関する紛争

事案の概要
  労働者CさんはZ運送会社のドライバーとして勤務していたが、退職時に仕事中に傷つけたトラックの修理代を請求されたためあっせん申請した。

 

申請人(労働者)の主張
  退職を申し入れたところトラックに残っている傷の修理代全額を会社から請求された。仕事中に起こした事故であり、労働者が全額負担すべきとは考えられない。応分の負担にしてもらいたい。

被申請人(会社)の主張
  Cさんには入社時に仕事中にトラックを傷つけた場合は本人負担で修理してもらうことを説明しており、Cさんも了解済みで入社している。何回か事故を起こし、その都度Cさんが直すと言っていたので本来削るべき手当を支給してきた。しかし修理しないまま退職を申し入れてきたので、Cさんに約束の実行を求めたものである。

あっせんの結果
  あっせん委員はZ社に対し、仕事中に労働者が発生させた事故等の賠償について報償責任(労働者の活動から利益を得る使用者はそこから生じるリスクも負担すべき)の考え方と判例を示し、全額負担は労働者に対し負担が重いと指摘した。またCさんに対し、自ら修理すると約束している点や、削られるはずの手当が支給されていたことを考慮するとある程度の負担はやむをえないと説明した。これを受けて損害額の約4割をCさんが負担することで合意し、和解が成立した。

《事例4》 自己都合退職後の補償に関する紛争

事案の概要
  労働者DさんはW社で夜勤専門の有期雇用労働者として契約を更新しながら働いてきた。W社では夜勤が必要なくなったとして、昼勤への配置転換とそれに伴う労働条件の変更をDさんに申入れたが、Dさんは労働条件の変更を受け入れられないとして自己都合退職した。しかし退職は本意ではなかったとして補償を求めるあっせん申請した。

 

申請人(事業主)の主張
  有期雇用契約とはいえ契約を更新し10年以上働いてきた。その間労働条件は低下しなかった。今回昼勤への配置転換を打診されたが、これを受け入れると大幅な減収となり生活できなくなるためやむを得ず退職した。しかし解雇に等しいと感じているため減収となった金額の6か月分を補償して欲しい。

被申請人(会社)の主張
  今年から予定していた仕事の受注がまったく無くなり、生産計画が大幅に狂ってしまった。雇用の継続を重要視し解雇はしなかった。やむなく配置転換と条件変更を提案したが受け入れてもらえなかった。

あっせんの結果
  あっせん委員は労働条件が変更されることで月収が以前の約5割から6割に下がる点を重視し、労働者が条件変更を受け入れなかった理由もある程度納得できるとして、会社側に考慮を求めたところ、減収額の約3か月分の金額を支払うことで合意し、和解が成立した。

《事例5》 雇止めに関する紛争

事案の概要
  労働者EさんらはQ社で有期雇用労働者として半年契約で雇用されていた。契約を1度更新し、1年間就労した段階で契約満了2日前に更新しないと突然通告された。新年度も契約が更新されるものと考えていたため、雇止めに納得がいかないとしてあっせん申請した。

 

申請人(労働者)の主張
  雇用契約を1回更新したが、更新の手続きは自動的で、2回目以降も当然更新されると考えていた。また自分たちが雇止めされる前に新規の採用をしており、雇止めされる理由が無い。賃金2か月分の補償を求めたい。

被申請人(会社)の主張
  雇止めした理由はEさんらに仕事上の問題があって人を入れ替えたいと考えたためである。またEさんらに対し自動的に契約を更新すると説明はしていないので、期間満了による退職と考えている。

あっせんの結果
  あっせん委員は、契約は1回しか更新されていないが、手続きが自動的に行われ次の更新もあると期待させたこと、雇止めの理由を本人らに説明していないこと、更新しない通告が期間満了の2日前だった点を踏まえ、会社側に譲歩を求めたところ、1か月分賃金の約75%の金額を支払うことで合意し、和解が成立した。

* 参考
「有期労働契約の締結、更新及び雇止め関する基準について」

《事例6》 整理解雇に関する紛争

事案の概要

   労働者Fさんは、R社の経営する店舗の店長として勤務していた。R社は、会社全体の経営状況が思わしくないことから複数ある店舗の全てを他社に譲渡することにしたが、譲渡先から店舗数の削減による経営改善を求められた。そこで、R社は1店舗を閉店することとし、それに伴って労働者Fさんを整理解雇した。これに対してFさんは本件整理解雇が無効であると主張し、あっせん申請した。

 

申請人(労働者の主張)

   R社から整理解雇に至った経緯についての説明を受け、整理解雇はやむを得ないものと思った。しかし、退職から相当期間経過した後も店舗は他社に譲渡されていないことを知り、整理解雇の必要がなかったのではないかと感じるようになった。

次の勤務先が決まるまでの4か月間は無収入の状態だったので、この間の賃金に相当する額を補償してほしい。

被申請人(会社)の主張

   経営状況が思わしくなかったのは事実であり、実際に店舗の譲渡についても交渉していた。譲渡に関する交渉の中で相手方から店舗数の削減等を求められており、やむなく人員削減に踏み切った。Fさんを整理解雇の対象にしたのは、Fさんにかねてから仕事上の問題があったためである。

   譲渡に関する交渉は結局まとまらず、従業員の雇用を維持するために店舗を閉めないでいるが、赤字を出し続けており経営が改善したわけでもない。

あっせんの結果

   あっせん委員が両当事者の主張をそれぞれ相手方に説明したところ、双方とも相手方の事情に理解を示した。特にFさんは店長であったこともありR社の経営状況が思わしくないことについては十分理解できるとして大幅に譲歩し、R社がFさんに賃金1か月分に相当する解決金を支払うことで両者が合意し、和解が成立した。

関連キーワード 整理解雇の四要素(整理解雇の四要件)

 

《事例7》 普通解雇に関する紛争

事案の概要
  労働者Gさんは、S社工場内において勤務していたが、S社から解雇されたことにつき納得がいかないとして、解雇に伴う経済的・精神的苦痛に対する補償を求めてあっせん申請した。

 

申請人(労働者の主張)

  社長から解雇通告を受けたが、解雇の理由について納得できる説明がなかった。私病の治療のため入院する予定があったが、解雇通告を受けたのは入院の2日まえのことであり、経済的、精神的に非常に苦痛であった。この苦痛に対して、賃金の5か月分に相当する額の補償を求める。

被申請人(会社)の主張

   Gさんは作業中の無駄話やミスが多く、注意を与えても反省せず、同じミスを繰り返した。Gさんに対しては解雇予告手当のほか、実際には勤務実績のない入院中の賃金に10万円を上乗せして支払い済みであり、解雇に関連してGさんにこれ以上の補償をすることは考えられない。

あっせんの結果

   あっせん委員は、S社に対し、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない解雇は無効とされることを説明し、解雇に関する裁判の例などを紹介しながら歩み寄りによる和解を求めるとともに、Gさんに対する指導が不足していたと思われる点を指摘した。Gさんに対しては、作業上の注意を受けながら改善しなかったGさんにも問題があるのではないかと指摘し、譲歩を求めた。

   結果、S社がGさんに対して賃金の1か月分相当の解決金を支払うことで両者が合意し、和解が成立した。

* 参考  労働契約法 

 

《事例8》 いじめ・嫌がらせに関する紛争

事案の概要
  労働者Hさんは、P社が運営する店舗の学生アルバイトとして採用されたが、店長から度々言葉によるいじめを受け、それにより精神的苦痛を与えられて退職を余儀なくされたとして、これに対する補償を求めてあっせん申請した。

 

申請人(労働者の主張)

   研修期間が終わる頃から、店長から言葉によるいじめを受けるようになった。また、「やる気がない」などと言われたこともあり、苦痛を感じた。新しい仕事も見つからず、仕事をすることに対して恐怖心もある。アルバイト代2.5か月分の補償をしてもらいたい。

被申請人(会社)の主張

   アルバイト募集に対しては多数の応募があったが、中でもHさんは話し方が丁寧であったことなどから採用を決めたものである。しかし、実際に勤務させてみると、Hさんは同じことを何度言っても理解せず、仕事を覚えることに対しても消極的で、また、遅刻もあった。このため、Hさんに対しては必要に応じて指導を与えていた。Hさんが何度も同じ失敗を繰り返すため、「やる気があるのか」と問い質したこともある。店長は、必要に応じて適切に指導を行ったのであり、いじめ・嫌がらせには当たらない。

あっせんの結果

   あっせん委員がP社の主張する指導内容について詳細な説明を求めたところ、Hさんの人格を否定するような発言等は認められなかったものの、大声での指導があったことが判明した。あっせん委員は、大声での指導があったために店長の「指導」がHさんには「言葉によるいじめ」と感じられた可能性があると指摘して両者に対して歩み寄りを求めた。

   結果、P社がHさんに対してアルバイト代の半月分に相当する解決金を支払うことで両者が合意し、和解した。

* 参考
労働契約法

 

《事例9》 賃金額に関する紛争

事案の概要
  労働者I さんは、ハローワークでT社の求人票をみて応募し、採用された。採用の翌月に初の賃金が支給されたが、I さんは、求人票に記載されていた賃金の額と実際の支給額に開きがあるとして、差額分の支払を求めてあっせん申請した。

 

申請人(労働者の主張)

   ハローワークの求人票に書いてあった賃金の額と実際に支給された額がかけ離れている。求人票には、賃金の額は見習い期間中も同じ条件であると書いてあった。差額分を支払ってほしい。

被申請人(会社)の主張

   ハローワークに出した求人票にはI さんが主張するとおりの賃金額を表示していたが、仕事の量によっては賃金の額が求人票に表示したものよりも低くなる可能性があり、採用面接の際にその旨説明済みである。本来であれば試用期間中にしっかりと仕事を覚えてもらうところであるが、I さんが1か月で退職してしまったので、その間の賃金についてはI さんが担当した仕事の売上額に基づいて算定した。

あっせんの結果

  あっせん委員は、T社がI さんに対して賃金額などの労働条件を書面により通知しなかっただけでなく、I さんが1か月で退職したという事情があったにせよ、口頭説明もしていない方法で在職期間中の賃金を算定した結果、実際の支払賃金額が採用面接の際の説明をも下回る額となったことに問題があると指摘し、T社に歩み寄りを求めた。その結果、T社が採用面接の際に説明した賃金額とI さんに対して支払われたものとの差額を支払うことで両者が合意し、和解が成立した。

* 参考
労働基準法

 

《事例10》 雇止めに関する紛争(2)

事案の概要

  V社は、M財団の委託を受けてN施設を管理運営する会社である。労働者Jさんは、V社の労働者として有期雇用契約を更新しながらN施設において勤務していたが、大地震による影響を理由としてV社から契約更新を拒否されたことから、雇止めに伴う経済的損失等に対する補償を求めてあっせん申請した。

 

申請人(労働者の主張)

   施設責任者から、大地震による影響を理由として雇止めを通告された。施設は地震による被害もほとんど受けておらず、翌日以降も通常営業している。地震発生前、次回の契約更新も口頭ではあるが約束されていた。雇止めの通告があったのは前回契約期間満了の数日前であったことも踏まえて、次回更新予定とされていた2か月間の賃金相当額を補償してほしい。

被申請人(会社)の主張

   地震後の計画停電や節電対策のため施設内の展示の一部を休止せざるを得なくなり、入場者が減少したことなどから、M財団から大幅な人員削減を指示され、それに伴って運営委託費も削減された。このため、やむを得ず雇止めとしたものである。

あっせんの結果

   あっせん委員は、JさんとV社との雇用契約が相当回数にわたって更新されてきていることや、地震発生前ではあるものの次回契約更新について施設責任者がJさんに意向確認していること、また、外部要因によりやむを得ず雇止めに至ったとはいえ、雇止めの通告が契約期間満了の数日前であったことなどを踏まえ、V社に歩み寄りを求めた。その結果、V社が賃金の1か月相当をJに支払うことで両者が合意し、和解した。

* 参考
「有期労働契約の締結、更新及び雇止め関する基準について」

 

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