家内労働は、我が国の戦後期から高度経済成長期における重要な労働力として大きな役割を果たしてきました。

 他方、近年の急速なIT化の進展により情報通信機器やインターネットの普及が驚異的なスピードで広がったことにより、個人が自宅に居ながらにして起業・独立して仕事をするという新しい就労形態(ワークスタイル)が見出されてきました。

 その結果、現在では「自宅で就労」=「内職」=「家内労働」という図式が必ずしも当てはまらなくなり、それぞれの就業形態に応じた呼称とともに法制度やガイドラインが策定されてきています。

 ここでは、家内労働法と家内労働者を中心に、その他の就業形態に応じた法制度やガイドライン、悪徳商法への対応策等について、ワンポイント形式で説明していきます。


1.家内労働と在宅ワークの違い

Q
自宅で個人的に仕事をしているのに「在宅ワーカー」「家内労働者」と呼び方が違うのは何故ですか?


A
契約形態や仕事内容によって、それぞれに適用される法律が違ってくるからです。


【解説】

自宅で仕事をするという就労形態には、「家内労働」「在宅ワーク」「在宅勤務」等の呼称があり、法令等により次のとおり定義されています。

「家内労働者」とは家内労働法により定義されたもの ※1 をいいます。

根拠&関係法令:家内労働法

「在宅ワーカー」とは文字通り「在宅ワーク ※2 」を行う者をいいます。

根拠:『在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン』

「在宅勤務者」とは、 雇用関係にある労働者 が自宅で仕事をする場合をいいます。

根拠:『情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン』

関係法令:労働基準法



※ 1
家内労働者は家内労働法により次のとおり定義されています。

(1)
製造加工業者・販売業者又はこれらの請負業者から委託を受けること

(2)
物品の提供を受け、それを部品・附属品又は原材料とする物品の製造加工等に従事すること

(3)
委託業者の業務目的である物品の製造加工 など を行うこと

(4)
主として労働の対償を得るために働くものであること

(5)
自己ひとり又は同居の家族と仕事をし、常態として他人を使用しない
   これらの要件を全て備えたものが家内労働者となります。



※ 2
『在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン』では、在宅ワークとは「情報通信機器を活用して請負契約に基づきサービスの提供等(例えば、テープ起こし、データ入力、ホームページの作成、設計・製図等) を行う在宅形態での就労をいう(法人形態により行っている場合や他人を使用している場合などを除く。)。

 

Q
自宅での就業は、契約によってどのような就業形態になりますか?

A
雇用契約が交わされている場合は「在宅勤務」になります。
業務請負契約のみであれば「在宅ワーク」か「家内労働」になります。

【解説】
雇用契約が結ばれていれば、単に就業場所が自宅だというだけで、一般労働者と同じになります。時間又は日あるいは月を単位にした賃金が支払われることになります。
業務請負契約を結んでいる場合は、「在宅ワーク」或いは「家内労働」に該当してきます。
賃金ではなく、完成された物に対する報酬又は工賃(多くは単価制)が支払われることになります。
雇用契約のような労使関係は生じませんが、契約を一方的に打ち切られるような場合も少なくありませんので、契約にあたっては十分注意する必要があります。

契約方式別の就業形態を図式にすると次のようになります。
(※ここでは、情報通信機器を活用する場合を例としました。)

 

 

Q
「在宅ワーク」と「内職(家内労働)」の違いを簡単に言うと何ですか?

A
パソコン・インターネットなど情報通信技術を活用するのが「在宅ワーク」です。
これに対して、物品の製造・加工等を行うのが「内職(家内労働)」です。


【解説】 「在宅ワーク」は従来からの「内職」と違い、パソコン・インターネット・電子メール・携帯電話などのモバイルツールを活用するというのが基本的概念です。ですから請け負う業務も高度な技術や専門知識を必要とする内容になります。「内職(家内労働)」は、 いわゆる賃加工作業です。つまり委託者(製造・販売業者)から原材料等の提供を受け、委託者の指定どおりに製造(組立)・加工を行うもので、パソコンなど情報通信機器の使用は定義付けされてはいません。
但し、文字入力を行う場合であって原稿に沿って文字入力を行いFD等に保存する作業であれば、家内労働法の解釈で「物品(FD)の加工等」に該当するとされています。
   *「内職」について

実は、「内職」についての法的な定義というものは明確にされていません。
家内労働に関する各種調査において、家内労働者の類型のうち「内職的家内労働者」を「世帯の本業とは別に家計の補助のために従事するもの」としています。
辞書によれば「家庭の主婦が補助的収入を得るために自宅において行う賃加工作業」となっています。これに専業的・副業的なものを加えたものが家内労働と呼ばれるものですが、家内労働=内職というイメージで受け止められることが多いようです。


 

Q
インチキ内職に騙されないためには、どうしたらいいのですか?

A

内職の内容を確認し、文書により契約を交わすようにしましょう。
契約内容の検討にあたっては、前述のガイドラインやこちらを参考にして下さい。



【解説】
国民生活センターや消費生活センターの発表によれば、「公告を見て申し込んだが、約束と全然違っていた」「契約解除に応じてもらえなかった」といった苦情相談が多いようです。
内職を受ける時は、委託者との間で契約を結ぶ必要があります。契約内容を充分吟味してから、文書で申込み(契約)を行うことが重要です。この契約文書が万一の場合のクーリングオフ(契約解除)時に法的に有効な書類になります。
どうしても不安な時は、お近くの消費生活センターへご相談下さい。

 


2.家内労働法の解釈について

Q
A氏は自宅の作業場に大きな机を置いて、仕事の時は近所から数名集めて委託作業をしていますが、この場合、A氏は家内労働者といえますか?

A
「家内労働者」、「委託者」、「委託者の代理人」の何れにも成り得ます。


【解説】
例えば、電気部品の組立を委託されたA氏が自宅に作業スペースを設け、A氏とその家族以外の者を集めて委託作業しているような場合には、A氏は条件によって「家内労働者」、「委託者」、「委託者の代理人」の何れにも成り得るということになります。

「家内労働者」及び「委託者」については、家内労働法第2条第2項及び第3項により明確に定義されており、「代理人」についても、家内労働法施行規則第1条及び第24 条中に記述があり、これの定義については昭和45年12月28日付け基発第922条「家内労働法の施行について」の中で示されています。(別記抜粋参照)

これを大前提として、いくつかの考えられるケースについて示してみますと、次のとおり となります。
家内労働者が委託業務の一部の工程に従事し、他の工程を再委託する場合には、その家内労働者が従事する工程の委託業務全体からみた比重を考慮して判断する。
〔ケース1〕
『委託者Bは、Aに自動車用ワイヤーハーネスの製造を依頼した。
Aは、まずCに電線結束を委託し、その納品を受けてからコネクター差しの作業を行なってから、完成製品をBに納品する。』という場合。

 

 AがBから委託された作業のうち“主たる部分”であるコネクター差しに従事して、準備工程である電線結束をCに委託している場合は、Aは 家内労働者 であり、且つCの 委託者 となる。

図式にすると次のとおり。

 

 

 但し、AからCに委託する部分について、AがBの指示のもとに、その意を受けて行っている場合には、Aは従事する作業工程の委託量全体に対する比重如何にかかわらず、常に家内労働者であるとともにBの 代理人 になる。

 

〔ケース2〕
『委託者Bは、Aにワイシャツの製造を依頼した。
Aは裁断を行なった後、縫製の作業をCに委託し、Cから縫製後のワイシャツ(完成品)の納品を受けて、Bに納品する。』という場合。

 

 

 Aが、Bから裁断の業務を明確に分離して委託されていない限り、Aを 製造・加工業者又はその請負業者 と見るのが妥当である。すなわち、裁断はかなり高度な技術を必要とするものの、ワイシャツ製造の大部分を占めているとはいえず、むしろ縫製の業務のほうが比重は高いものと考えられ、このような場合、Aは、ワイシャツの製造( 完成 ) を委託されたもので、その製造工程のどの部分を自らが行なうかは、Aの裁量によるものであると考えられ、これは一般の請負関係であると考えられるからである。

 

 但し、この場合裁断の業務を明確に分離して委託されている時は、ケース1と同様Aは 家内労働者 であるとともに 委託者 または 代理人 となる。

家内労働者が委託された業務と同じ内容の業務を一部再委託している場合には、 その家内労働者自身が、実際に製造加工等に従事する量と再委託する量との割合及びその家内労働者とその発注者または元請との間の委託関係の状況等により判断する。

 

〔ケース3〕

『委託者Bは、Aに紙箱の製造(組立)を依頼した。

Aは自ら組立業務に従事しつつ、同じ作業をCに委託していた。』という場合。

 Aの作業量が大部分である場合は、Aは 家内労働者 であり、且つCの 委託者 である。 逆に、Cに委託する部分が委託量の“大部分”を占めているような場合には、BとAとの関係は一般的な請負契約とみられ、Aは製造加工業者又はその請負業者であってAが自ら行なっている部分は、Aが自分の判断で請負業務の一部分を行なっているものと考えられる。

(1)Aの作業量が大部分である場合

 なお、このような場合、Aが委託者になることは、Cの保護などからみて望ましいことではないので、AはBの代理人となるような委託経路をとることが望ましい。


(2)Cの作業量が大部分である場合

 

〔ケース4〕

『委託者Bは、Aに対して紙箱の製造(組立)を委託した。
併せて、Cにも委託するように依頼した。
Aは自ら組立業務に従事しつつ、同じ作業をCに委託していた。』という場合。

 

 AがCに対して、Bから一定の手数料をうけてBの名において委託をしている場合には、Aの従事する業務の比重に関係なくAは 家内労働者 であるとともに、Cに対してはBの 代理人 である。

 


 

Q
製造業の社員が、材料等を持ち帰り自宅で作業をする場合、当該作業は家内労働になりますか?

A
特段の契約条項が無い限り、家内労働にはあたりません。

 

【解説】 一般に「家内労働」とは就業場所が自宅の場合が多いのですが、就業場所は家内労働の法律的要件ではありません。「在宅勤務」という就労形態があるように、実際には個々の事案毎に、作業の指揮監督、労働時間等服務全般の実情を勘案して判断する必要があります。工場等で働く労働者が、当該工場と同じ物品の製造・加工作業を自宅に持ち帰る場合については、昭和23年7月 5 日付基収第2204号通達で「通常の労働関係にある労働者がその労働の一部を自宅で行なう如き場合は当然労働基準法が適用されるのである。」と示されています。つまり通常の工場労働の延長の如き場合は、いわゆる「持ち帰り残業」と同義にとらえ、家内労働関係よりも雇用労働関係にあるとするのが一般原則的な考え方になります。

  いくつかのケースについて、原則を踏まえながら基本的な考え方を示してみますと、次のとおりとなります。

 

製造業で働く労働者が、当該工場と同じ物品の製造・加工作業を自宅に持ち帰り作業を行なう場合には、当該労働者の労働者性を考慮して判断する。
〔ケース1〕

『労働者Aは、自社の生産ラインの一部を自宅に持ち帰って、 自ら 作業している。自宅での作業分は賃金ではなく、作業量に応じた加工賃という形で支払われている。』という場合。

 

 Aが会社の指示により自分に関係する作業の全部又は一部を自宅に持ち帰っている場合は、原則としてAは 労働者 であり、労働基準法の適用を受ける。納品分について工賃が支払われている場合であっても、会社とAとの間に交わされている契約内容等を確認し、雇用契約に支障を及ぼすものでない限り、労働者として取り扱うなど、その実態に応じて判断する。

図式にすると次のとおり。

 

 

〔ケース2〕

『労働者Aは自社の生産品を自宅に持ち帰り、自分の妻に目視検査の作業をさせている。
(Aは行なわない)

生産品の納品(搬送)は、Aが自らの出退勤時に行なっており、納品伝票はAの妻の名前で処理されている。工賃もAの妻名義の口座へ振込まれる。』という場合。

 

 

 Aが会社の指示により自分に関係する作業の全部又は一部を自宅に持ち帰っていて自分の妻に作業させている場合は、Aの妻は家内労働者になる。
 この場合、委託者は会社でありAはその代理人であるという委託経路をとることが望ましい。

 

Q
広告代理店業の会社から、ホームページの作成依頼を個人的に受けて、自宅で作業する場合、この仕事は内職(家内労働)になりますか?

A
「在宅ワーク」になります。

 

【解説】
家内労働は、「製造又は販売業者」から委託を受けて「物品の製造加工」を行うものとされています。委託元が広告代理店業の会社ですと、「製造又は販売業者」からの委託とはなりません。また通常ホームページの作成は、装丁や内容について作成者の裁量に委ねられる場合が多く、「委託者の指定どおりに」ということではありませんから、家内労働法の適用は無いということになります。
委託元の広告代理店業の会社が自分の勤務する会社であれば、特段の契約条項が無い限り、前述のとおり「勤務の延長」と見なされます。

 

3.お問い合わせ先

 上記の説明及び事例は、あくまで例示でありますので、実態により判断しがたい場合には、長野労働局賃金室まで、お問い合わせください。

 


    問い合わせ先

      長野労働局 賃金室

        家内労働担当(内線2324)

        TEL026-223-0555

        FAX026-223-0591

 

 

 

 

 

 

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