じん肺管理区分について
1 じん肺とは
「じん肺」とは、トンネル工事などの掘削作業や金属のアーク溶接作業などの各種「粉じん作業」において、主として小さな土ぼこりや金属の粒などの無機物または鉱物性の「粉じん」の発生する環境で仕事をしている方が、適切な暴露防止対策が行われていないなどにより、「粉じん」を長い年月にわたって多量に肺に吸い込み、この「粉じん」に対して肺が反応し、変化を起こした病気をいいます。
2 じん肺管理区分とは
「じん肺管理区分」とは、じん肺健康診断の結果に基づき、じん肺を区分したもので、管理1、管理2、管理3イ、管理3ロ、管理4の5段階に分かれています。管理1は、じん肺の所見がないという区分ですが、管理2以上は、じん肺の所見があるということを示しており、数字が大きくなるに従いじん肺が進行していることになります。
3 じん肺健康診断
じん肺法に基づいて事業者が実施すべき健康診断は、「就業時健康診断」、「定期健康診断」、「定期外健康診断」、「離職時健康診断」があり、胸部エックス線写真撮影検査、肺機能検査等を受けることになっています。
なお、じん肺の定期健康診断の実施頻度は下表のとおりです。
粉じん作業従事との関連 じん肺管理区分 頻度 常時粉じん作業に従事している
管理1 3年以内ごとに1回 管理2 1年以内ごとに1回 管理3(イ・ロ) 常時粉じん作業に従事したことがあるが、
現在は非粉じん作業に従事している
管理2 3年以内ごとに1回 管理3(イ・ロ) 1年以内ごとに1回
4 じん肺管理区分の決定対象となる粉じん作業について
じん肺にり患するおそれのある(管理区分の決定対象となる)粉じん作業は、「じん肺法施行規則別表」に記載された作業です。
じん肺に罹患するおそれのある(管理区分の決定対象となる)粉じん作業
1 土石、岩石又は鉱物(以下「鉱物等」という。)(湿潤な土石を除く。)を掘削する場所における作業。ただし、次に掲げる作業を除く。
イ 坑外の、鉱物等を湿式により試錐する場所における作業
ロ 屋外の、鉱物等の動力又は発破によらないで掘削する場所における作業1の2 ずい道等(ずい道及びたて抗以外の抗(採石法(昭和25年法律第291号)第2条に規定する岩石の採取のためのものを除く。)をいう。以下同じ。)の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、鉱物等を掘削する場所における作業 2 鉱物等(湿潤なものを除く。)を積載した車の荷台をくつがえし、又は傾けることにより鉱物等(湿潤なものを除く。)を積み卸す場所における作業。(次号、第3号の2、第9号又は第18号に掲げる作業を除く。) 3 坑内の、鉱物等を破砕し、粉砕し、ふるい分け、積み込み、又は積み卸す場所における作業。ただし、次に掲げる作業を除く。
イ 湿潤な鉱物等を積み込み、又は積み卸す場所における作業
ロ 水の中で破砕し、粉砕し、又はふるい分ける場所における作業
ハ 設備による注水をしながらふるい分ける場所における作業3の2 ずい道等の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、鉱物等を積み込み、又は積み卸す場所における作業。 4 坑内において鉱物等(湿潤なものを除く。)を運搬する作業。ただし、鉱物等を積載した車を牽引する機関車を運転する作業を除く。 5 坑内の、鉱物等(湿潤なものを除く。)を充てんし、又は岩粉を散布する場所における作業。 5の2 ずい道等の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、コンクリート等を吹き付ける場所における作業。 5 の3
坑内であって、第1号から第3号の2まで又は前2号に規定する場所に近接する場所において、粉じんが付着し、又はたい積した機械設備又は電気設備を移設し、撤去し、点検し、又は補修する作業。 6 岩石又は鉱物を裁断し、彫り、又は仕上げする場所における作業。(第13号に掲げる作業を除く。)ただし、次に掲げる作業を除く。
イ 火炎を用いて裁断し、又は仕上げする場所における作業
ロ 設備における注水又は注油をしながら、裁断し、彫り、又は仕上げする場所における作業7 研ま材の吹き付けにより研まし、又は研ま材を用いて動力により、岩石、鉱物若しくは金属を研まし、若しくはばり取りし、若しくは金属を裁断する場所における作業。(前号に掲げる作業を除く。)ただし、設備による注水又は注油をしながら、研ま材を用いて動力により、岩石、鉱物若しくは金属を研まし、若しくはばり取りし、又は金属を裁断する場所における作業を除く。 8 鉱物等、炭素を主成分とする原料(以下「炭素原料」という。)又はアルミニウムはくを動力により破砕し、粉砕し、又はふるい分ける場所における作業(第3号、第15号又は第19号に掲げる作業を除く。)ただし、次に掲げる作業を除く。
イ 水又は油の中で動力により破砕し、粉砕し、又はふるいわける場所における作業
ロ 設備による注水又は注油をしながら、鉱物等又は炭素原料を動力によりふるい分ける場所における作業
ハ 屋外の、設備による注水又は注油をしながら、鉱物等又は炭素原料を動力により破砕し又は粉砕する場所における作業9 セメント、フライアッシュ又は粉状の鉱石、炭素原料若しくは炭素原料若しくは炭素製品を乾燥し、袋詰めし、積み込み、又は積み卸す場所における作業。(第3号、第3号の2、第16号又は第18号に掲げる作業を除く。) 10 粉状のアルミニウム又は酸化チタンを袋詰めする場所における作業。 11 粉状の鉱石又は炭素原料を原料又は材料として使用する物を製造し、又は加工する工程において、粉状の鉱石、炭素原料又はこれらを含む物を混合し、混入し、又は散布する場所における作業。(次号から第14号に掲げる作業を除く。) 12 ガラス又はほうろうを製造する工程において、原料を混合する場所における作業又は原料若しくは調合物を溶解炉に投げ入れる作業。ただし、水の中で原料を混合する場所における作業を除く。 13 陶磁器、耐火物、けいそう土製品又は研ま材を製造する工程において、原料を混合し、若しくは成形し、原料若しくは半製品を乾燥し、半製品を台車に積み込み、若しくは半製品若しくは製品を台車から積み卸し、仕上げし、若しくは荷造りする場所における作業又はかまの内部に立ち入る作業。ただし、次に掲げる作業を除く。
イ 陶磁器を製造する工程において、原料を流し込み成形し、半製品を生仕上げし、又は製品を荷造りする場所における作業
ロ 水の中で原料を混合する場所における作業14 炭素製品を製造する工程において、炭素原料を混合し、若しくは成形し、半製品を炉詰めし、又は半製品若しくは製品を炉出しし、若しくは仕上げする場所における作業。ただし、水の中で原料を混合する場所における作業を除く。 15 砂型を用いて鋳物を製造する工程において、砂型をこわし、砂落としし、砂を再生し、砂を混練し、又は鋳ばり等を削り取る場所における作業。(第7号に掲げる作業を除く。)ただし、設備による注水若しくは注油をしながら、又は水若しくは油の中で、砂を再生する場所における作業を除く。 16 鉱物等(湿潤なものを除く。)を運搬する船舶の船倉内で鉱物等(湿潤なものを除く。)をかき落とし、又はかき集める作業。 17 金属その他無機物を製錬し、又は溶融する工程において、土石又は鉱物を開放炉に投げ入れ、焼結し、湯出しし、又は鋳込みする場所における作業。ただし、転炉から湯出しし、又は金型に鋳込みする場所における作業を除く。 18 粉状の鉱物を燃焼する工程又は金属その他無機物を製錬し、若しくは溶融する工程において、炉、煙道、煙突等に付着し、若しくはたい積した鉱さい又は灰をかき落とし、かき集め、積み込み、積み卸し、又は容器に入れる場所における作業。 19 耐火物を用いてかま、炉等を築造し、若しくは修理し、又は耐火物を用いたかま、炉等を解体し、若しくは破砕する作業。 20 屋内、坑内又はタンク、船舶、管、車両等の内部において、金属を溶断し、アーク溶接し、又はアークを用いてガウジングする作業。 20の2 金属をアーク溶接する作業。 21 金属を溶射する場所における作業。 22 染土の付着した藺(い)草を庫(くら)入れし、庫出しし、選別調整し、又は製織する場所における作業。 23 長大ずい道(著しく長いずい道であって、厚生労働大臣が指定するものをいう。)の内部の、ホッパー車からバラストを取り卸し、又はマルチプルタイタンパーにより道床をつき固める場所における作業。 24 石綿をときほぐし、合剤し、紡績し、紡織し、吹き付けし、積み込み、若しくは積み卸し、又は石綿製品を積層し、縫い合わせ、切断し、研まし、仕上げし、若しくは包装する場所における作業。 (平成26年10月1日現在)
5 じん肺管理区分の決定申請等について
じん肺管理区分の決定申請等の種類
(1)事業者によるエックス線写真等の提出(じん肺法第12条)
事業者の方は、常時粉じん作業に従事する労働者の方、または常時粉じん作業に従事する労働者であった方に、じん肺健康診断(就業時・定期・定期外・離職時)を行ったとき、その診断において「じん肺の所見がある」とされた場合は、遅滞なく「じん肺管理区分の決定」のために必要なエックス線写真等を都道府県労働局長あてに提出しなければなりません。
(2)随時申請(じん肺法第15条)
常時粉じん作業に従事する労働者の方、または常時粉じん作業に従事する労働者であった方は、いつでもじん肺健康診断を受けて、都道府県労働局長に「じん肺管理区分の決定申請」をすることができます。事業者の方は、労働者の方が当該申請をする場合、常時粉じん作業に従事する労働者または労働者であった者であることの証明に、ご協力をお願いします。
(3)随時申請(じん肺法第16条)
事業者の方は、いつでも、常時粉じん作業に従事する労働者の方、または常時粉じん作業に従事する労働者であった方について、じん肺健康診断を行い、都道府県労働局長に「じん肺管理区分の決定申請」をすることができます。
注)都道府県労働局長に管理2以上のじん肺管理区分決定をされた者で、その後のじん肺健康診断を行ったとき、その診断において、「じん肺の所見がない」とされた場合であっても、都道府県労働局長あてにじん肺管理区分決定申請を行い、管理区分を決定しなければなりません。(特別申請)
じん肺管理区分の決定申請等に必要な書類
「じん肺管理区分決定申請等」に必要な書類は、下表のとおりです。
様式番号をクリックすると当該様式をダウンロードすることができます。
※岐阜局様式以外については、厚生労働省本省の様式コーナーへのリンクとなっています。
必要な書類 特記事項 様式 申請等の種類 12条 15条 16条 エックス線写真等の提出書 第2号
○ じん肺管理区分決定申請書 第6号
○ ○ じん肺健康診断結果証明書 第3号
○ ○ ○ エックス線写真 直接撮影による胸部全域の写真 ○ ○ ○ DR(FPD)撮像表示条件確認表 エックス線写真がデジタル撮影のとき(DR) 様式 (○) (○) (○) CR撮像表示条件確認表 エックス線写真がデジタル撮影のとき(CR)
様式 (○) (○) (○) 申立書(1) 会社の倒産、廃止等により事業者証明が得られないとき
同時に職歴証明書を添えること
様式1
(○) 申立書(2)
申立書(1)に記載の従事期間以降、粉じん作業について
いないことの申立て
(○) 職歴証明書 当時の上司または同僚、部下であった者の2名以上の証明書 (○) 申立書 過去に随時申請(じん肺法第15条)を行い、管理区分決定され
ている場合、こちらの申立書を提出することにより、上記申
立書(1)、(2)、職歴証明書を省略することができます
(○) (注1)事業者証明も、当時の上司又は同僚、部下であった者の2名以上の証明も得られない場合は、申請先の都道府県労働局健康安全課または健康課にご相談ください。
(注2)(○)については、特記事項記載の場合に必要になります。
じん肺管理区分の決定申請等の提出先
「じん肺管理区分決定申請等」の提出先は下表のとおりです。
申請等の種類 申 請 先 12条 事業場の所在地を管轄する 都道府県労働局 健康安全課または健康課
15条 決定を受ける者の住所を管轄する 都道府県労働局 健康安全課または健康課
16条 事業場の所在地を管轄する 都道府県労働局 健康安全課または健康課
6 じん肺管理区分の決定を受けた場合について
事業者のとるべき措置
事業者によるエックス線写真等の提出(じん肺法第12条)によりじん肺管理区分の決定をされた場合、じん肺管理区分を労働者に通知しなければなりません。
また、管理2及び管理3イと決定された労働者については、就業場所を変更したり、粉じん作業に従事する時間を短縮するなど粉じんにさらされる度合いを減らすように努力しなければなりません。
区分に応じて、下表の措置を講じる必要があります。
管理区分 措 置 備 考 管理1 就業上の特別な措置なし 管理2 粉じんばく露の低減措置 管理3イ 粉じんばく露の低減措置 粉じん作業からの転換の努力義務(転換手当30日分)
都道府県労働局長からの勧奨を受けた場合 管理3ロ 粉じん作業からの転換義務(転換手当60日分)
都道府県労働局長からの指示を受けた場合 管理2又は3で
合併症り患
療養 管理4 療養
(注1)じん肺の合併症として法令で認められているのは、「肺結核」、「結核性胸膜炎」、「続発性気管支炎」、「続発性気管支拡張症」、「続発性気胸」、「原発性肺がん」の6つの疾病です。
(注2)労災保険の請求手続については、最寄りまたは最終粉じん作業事業場を管轄する労働基準監督署にご相談ください。
じん肺管理区分の決定(管理2または管理3(イ・ロ))を受けている方が退職するとき
粉じん作業に従事した事業場に勤務している間は、事業場で定期的にじん肺健康診断が行われますが、退職後は労働者本人がでじん肺の状態を把握していく必要があります。そのため、じん肺管理区分が「管理2」または「管理3イ、ロ」の決定を受けている方が退職するときは、事業者が健康管理手帳交付申請事務を代行していただきますよう、ご協力をお願いします。
なお、健康管理手帳の手続き詳細については、「安全衛生法に基づく健康管理手帳」のページをご参照ください。
この記事に関するお問い合わせ先
労働基準部 健康安全課 TEL : 058-245-8103