通勤災害とは


 通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。

 この場合の「通勤」とは、労働者が、1.就業に関し、2.住居と3.就業の場所との間を、4.合理的な経路及び方法により往復することをいい、5.業務の性質を有するものを除くものとされていますが、労働者が、6.往復の経路を逸脱し、又は往復を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の往復は通勤とされません。ただし、逸脱又は中断が7.日常生活上必要な行為であって労働省令で定めるやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き通勤となります。
 このように、通勤災害とされるためには、その前提として、労働者の住居と就業の場所との間の往復行為が通勤の要件を満たしている必要があります。
 そこで、労災保険法における通勤の要件をまとめると次のようになります。


1. 「就業に関し」とは
 労働者の住居と就業の場所との往復行為が業務と密接な関連をもって行われることを要するという意味であり、労働者が被災当日業務に従事することになっていたこと、又は、現実に従事したことが必要となります。
 また、往復行為が業務に関連しているかどうかについては、例えば、出勤の場合遅刻やラッシュを避けるための早出等就業開始時刻に間に合うようにと住居を出て就業の場所へ向かう場合のように、直接就業との関連性が認められる場合であれば、時刻的に若干の前後があっても就業との関連性は失うものではありません。

2. 「住居」とは
 労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の就業の拠点となる所をいいます。
 したがって、就業の必要性から労働者が家族のいる住居とは別にアパ-トを借りている場合や、天災や交通ストライキ等の事情のためやむを得ず一時的に通常の住居以外の場所(会社の宿泊施設や最寄りのホテルなど)に宿泊する場合は、就業の拠点としての性格を有する限り、住居と認められます。また、単身赴任者等が週末等に「就業の場所」から家族の住む家屋(自宅)へ帰り、週初め等に当該自宅から「就業の場所」へ出勤する場合(週末帰宅型通勤)についても一定の要件に該当する場合は当該自宅が住居と認められます。

3. 「就業の場所」とは
 労働者が業務を開始し、又は終了する場所をいいます。
 一般的には、会社、工場、事務所等本来の業務を遂行する場所のほか、商品を得意先へ届けてその得意先から直接帰宅する場合はその届け先が「就業の場所」となります。また、外勤業務に従事する労働者が、自己の担当する特定区域内にある数カ所の得意先を回って自宅との間を直接往復しているような場合には、自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所であり、最後の用務先が業務終了の場所となります。

4. 「合理的な経路及び方法」とは
労働者が住居と就業の場所との間を往復する場合に、一般に用いると認められる経路 及び手段等をいいます。
 合理的な経路については、通勤のために通常利用することができる経路であれば、複数あったとしてもそれらの経路はいずれも合理的な経路となります。また、道路工事等当日の交通事情により迂回して通る経路など通勤のためにやむを得ずとる経路も合理的な経路となります。しかしながら、特段の合理的な理由もなく著しく遠回りとなる経路をとる場合などは、合理的な経路とはなりません。
 また、合理的な方法については、鉄道、バス等の公共交通機関を利用する場合、自動車、自転車等を本来の用法にしたがって使用する場合、徒歩の場合等通常用いることのできる交通方法は、当該労働者が平常用いているか否かにかかわらず、一般的な合理的な方法となります。

5. 「業務の性質を有するもの」とは
 上記1.から4.までの要件を満たす往復行為であっても、当該往復行為中に被った災害が業務災害と解されるものをいいます。例えば、事業主の提供する専門交通機関を利用してする出退勤、突発的事故等による緊急用務のため、休日に呼び出しを受け緊急出勤する場合がこれに該当します。

6. 「逸脱し、又は中断した場合」とは
 「逸脱」とは、通勤の途中で就業又は通勤と関係のない目的で合理的な経路からはずれることをいい、「中断」とは、通勤の経路上において通勤とは関係のない行為を行うことをいいます。
 具体的には、通勤の途中で映画館に入る場合、バ-で飲酒する場合などがこれに該当します。しかし、労働者が通勤の途中において、経路近くの公衆便所を利用する場合や経路上の店でタバコや新聞、雑誌を購入する場合などのように、労働者の通常の通勤行為に付随するとみられるささいな行為を行う場合には、必ずしも逸脱、中断として取り扱われるとは限りません。
 通勤の途中で逸脱又は中断があるとその後たとえ再び経路に復したり、中断となった行為を中止したとしても、原則通勤とは認められません。しかし、例外として、逸脱、中断が「日常生活上必要な行為であって労働省令で定めるもの」をやむを得ない事由により最小限度の範囲で行うものである場合には、逸脱、中断の間を除き、合理的な経路及び方法に復した後は再び通勤となります。

7. 「日常生活上必要な行為であって労働省令で定めるもの」とは
(イ)


日用品の購入その他これに準ずる行為
職業能力開発促進法第15条の6第3項に規定する公共職業能力開発施設において行われる職業訓練
(ロ)

学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
(ハ) 選挙権の行使その他これに準ずる行為
(ニ) 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為


この記事に関するお問い合わせ先

労働基準部 労災補償課 TEL : 024-536-4605

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